本論文は,ブランド・ロゴにおける配色がブランド・パーソナリティ知覚に与える影響と,その適合がもたらす効果を検討するものである。本論文では,配色の中でも色相差に注目し,色相差の異なる2種類のブランド・ロゴを用い4つの実験を行った。その結果,以下3つのことが確認できた。1つ目は,ブランド・ロゴの配色とブランド・パーソナリティ知覚に適合関係が存在することであり,具体的には,色相差の小さい類似色相配色のブランド・ロゴは,洗練のブランド・パーソナリティと,色相差の大きい補色色相配色のブランド・ロゴは興奮のブランド・パーソナリティと適合関係にあることを確認した。2つ目として,ブランド・ロゴの配色とブランドが訴求するパーソナリティが適合している場合,ブランド態度が向上することを明らかにした。また3つ目に,2つ目に明らかになった関係のメカニズムとして,適切感が媒介することを確認した。本論文は,ブランド・ロゴにおける配色を活用した研究領域を拡張し,実務的にはブランド・ロゴのデザイン時の指針を提供できる。
This paper examines the effect of color schemes in brand logos on brand personality perception, and the effect of their congruence. In our research, brand logos were created using an analogous- (small hue difference) and complementary- (large hue difference) hue color scheme. Four experiments were conducted to test these color schemes. The results revealed three key findings. First, the brand personality perception was affected by the color scheme of the brand logo. Specifically, the use of an analogous-hue color scheme was associated with sophisticated brand personality, while a complementary-hue color scheme heightened exciting brand personality. Second, when the color scheme of the brand logo was aligned with brand personality, consumers heightened their brand attitude. Third, the mechanism underlying this relationship was identified as feeling right.
2024年4月,カルチュア・コンビニエンス・クラブが運営していたTポイントが,SMBCグループで利用可能であるVポイントと統合され,新生Vポイントとして運用を開始した。新旧のVポイントで使用されているロゴカラーを比較してみると,旧来のVポイントでは緑と黄緑の2色が採用されている一方,装いを新たにしたVポイントでは,Tポイントで使用されていた青と黄色の2色をロゴカラーとして採用している。ほかにも,大手コンビニエンスストアチェーンであるセブンイレブンが緑と赤系を基調としたロゴであるのに対し,ファミリーマートのロゴマークは緑と青の2色をメインカラーとしている。このように同一業態であっても,ブランド・ロゴ(以下,ロゴ)における配色の組み合わせは,多岐にわたる。
ロゴに代表されるブランドの視覚的な情報は,意味的な手がかりや言語的な情報を伝達できることから(Edell & Staelin, 1983),ブランド戦略において重要な役割を果たす(Henderson et al., 2003)。また,ビジュアル・マーケティングにおけるデザインの特性も,ブランド・エクイティに影響する(Luffarelli et al., 2019)。自社のブランド・パーソナリティ(以下,BP)が適切に消費者に伝わらなければ,ブランド戦略が失敗する可能性も指摘されていることから(Malär et al., 2012),ロゴを構成する各要素は,慎重に検討されるべきであり,それらの要素とBPの複合的な視点から消費者のブランドに対する態度を捕捉することは,学術的にも実務的にも重要であるといえよう。
これまで,形状や色をはじめとするロゴの視覚的要素に注目した研究は,ロゴにおける形状の特徴を体系的に整理したHenderson and Cote(1998)を端緒に,さまざまな視点から検討されてきた。また,ロゴの色に注目した研究では,ロゴ内で用いられる1つの色がBP知覚に与える影響を捕捉したLabrecque and Milne(2012)が挙げられる。
一方で,これまでのロゴにおける色を対象とした消費者行動研究では,実務的な視点と相違があることが指摘されている。その1つに,実務的には単一色のみで構成されているロゴが少ないことが挙げられ(Celhay & Luffarelli, 2024),色の組み合わせ,すなわち配色を用いた研究の必要性が説かれている。しかしながら,多くの研究が1つの色に焦点を当てていることから(Jeon et al., 2020),実務における複雑なブランド表現を十分に捉えきれておらず,この点を踏まえると学術研究と実務の間にギャップが存在する。
上記のような指摘から,近年では,色の組み合わせを考慮した消費者行動研究がすすめられており,Dew et al.(2022)は,実在するロゴを使用しながら,配色や形状などのロゴの視覚的要素と消費者のBP知覚との組み合わせを通じたモデル構築を機械学習的に行い,モデルに基づいた典型的なロゴを提案している。一方で,Dew et al.(2022)の研究は,モデル構築やロゴの作成手法の提案が主眼であり,ロゴの諸要素とBPの適合がブランド態度にもたらす影響やそのメカニズムの理解は,検討がなされていない。加えて,実在のロゴを使用していることから配色に関する議論も特定の色の組み合わせに依存した部分があり,配色の効果を一般化して論じるには限界がある。
上述のリサーチギャップを踏まえ,本論文は,ロゴの配色がBP知覚に与える影響について心理的メカニズムを含めた検討を行うことを目的とする。
本論文では4つの実験を通じて,以下3つの知見を確認した。1つ目は色相差が小さい(大きい)2色で構成される類似(補色)色相配色1)のロゴは洗練(興奮)のBPと適合関係にあることである。2つ目は,ロゴの配色とBPの適合により,消費者のブランド態度の向上に寄与すること,そして3つ目はそのメカニズムとして適切感(Cesario et al., 2004;Higgins, 2000)が媒介される点である。
配色を用いた消費者行動研究では,色の種別を表す属性である色相に焦点を当てた研究がいくつか存在する(日本色彩学会,2011)。Martinez et al.(2021)は,石鹸とチョコレートバーの2つの製品カテゴリーを用い,探索的に店舗環境(オレンジ・青)と製品パッケージ(赤・オレンジ・青・ベージュ)の配色がもたらす効果を検証した。このように探索的に配色の効果を見る研究は,White et al.(2021)でもスマートフォンやヘッドホンなどの広告を通じて検証されている。
上述の研究は,特定の色の組み合わせに注目した研究である。一方で,より一般化した議論を行うために,2色の色相差に注目した研究も進められており,それらの研究では2つの対照的な配色を用いて議論がなされている。その2つとは,赤とオレンジのように色相環上で隣接する2色を用いる類似色相配色と,黄色と青のように色相環上の対角の位置にある補色色相配色である。
広告と製品(Huang et al., 2020)や,カラーバリエーションが豊富な製品における製品陳列(河股・守口,2024)において,この2つの配色を活用した研究が見られる。また,消費者の配色に対する志向が状況要因によって異なることも指摘されており,社会的排斥を受けた消費者は,社会的排斥を受けていない消費者に比べて,類似色相配色を用いた部屋を好む(Kwon et al., 2024)。
2.2 ブランド・ロゴの視覚的要素に注目した消費者行動研究ロゴが消費者の態度にもたらす影響に焦点を当てた研究は,Kim and Lim(2019)で示されたロゴの基本的な視覚的要素である,形状,フォント,色の3つでさまざまな議論がなされている。形状に関する議論では,ロゴの縦横比(Pittard et al., 2007)や,丸み(Baxter et al., 2015;Jiang et al., 2016;Li et al., 2023),構造(Affonso & Janiszewski, 2023),安定性(Rahinel & Nelson, 2016),動態性(Cian et al., 2014)など多くの視点から研究が行われている。フォントについても,フォント間の余白(Gupta & Hagtvedt, 2021)や,フォントの完全性2)(Hagtvedt, 2011)などを対象に研究が進められている。本論文が対象とする色についても,ロゴに緑色を採用することで,環境配慮に関心のある企業であると消費者が知覚すること(Sundar & Kellaris, 2017),ロゴの明度(Zeng et al., 2025)や彩度(河股,2024)が創業時期知覚に与える影響が検討されている。
また,ロゴの視覚的要素がBP知覚に与える影響を議論した研究も複数存在する。ロゴで使用されるモチーフがより自然に描写されている場合,ブランドの誠実さ知覚が高まったり(Chen et al., 2023),ロゴの形状に厚みを持たせることで,興奮,有能,洗練及び,たくましさの4つのBP知覚が高まる(Eyni et al., 2023)。他にも,Sharma and Varki(2018)はロゴの外側にある余白(パッシブな余白)と,ロゴの各要素の間にある余白(アクティブな余白)を区別し,アクティブな余白が洗練及び,興奮の2つのBP知覚に影響を及ぼすことを確認している。ロゴの色とBP知覚の関係についてみると,単色の効果を検討したLabrecque and Milne(2012)は,色相のみならず,明度や彩度がそれぞれのBP知覚に与える影響を明らかにしている。
また,単色のロゴと複数色のロゴの比較を行ったSong et al.(2022)は,一連の実験を通じてロゴ内で複数の色を用いることで,企業が提供する製品が多様であるという知覚をもたらし,企業に対する態度を高めることを確認した。また,Celhay and Luffarelli(2024)は,ロゴの背景色に白(黒)を使用すると,ロゴで用いられる色の印象のうち,ポジティブ(ネガティブ)な側面に消費者が注目することを明らかにした。
加えて,ロゴの配色がもたらす効果は,消費者特性によって変化することも示されている。Jeon et al.(2020)は,類似色相配色が,補色色相配色に比べて,色の近接性を高く知覚しやすいことを挙げ,色の近接性の知覚と消費者特性である文化的自己観(Markus & Kitayama, 1991)を組み合わせて議論した。関係性や調和を重んじる相互協調的自己観を有する消費者は,ロゴにおける2色の関係性に注目する。そのため,色の近接性を高く知覚しやすい類似色相配色のロゴのほうが,補色色相配色のものよりも好ましいことを確認した。一方で,独立性を重視する相互独立的自己観を持つ消費者は,ロゴの配色について,1つ1つの色を独立したものであると捉えるため,配色の異なる2種類のロゴに対する評価に統計的に有意な差は見られなかった。
Dew et al.(2022)は,実在するロゴを用い,配色のみならず,フォントや形状などのロゴの諸要素と消費者のBP知覚について,機械学習を通じた検討を行った。そして,BPごとに適したロゴの視覚的な要素の特徴量を抽出しながら,企業特性に合わせた典型的なロゴの提案を行っている。
前章では,配色やロゴに関する既存研究を概観してきた。配色に関する研究では色相に注目した研究が行われており,ロゴを対象とした研究では,形状や1つの色に注目し,BP知覚に影響を及ぼす研究が存在すること,また,近年ではロゴの配色にも注目し,配色がもたらす効果についても議論が進められていることが見て取れた。先述したDew et al.(2022)では,実在するロゴを用い,色や形状などのロゴの諸要素とBP知覚の関係性について機械学習的にモデル構築を行い,典型的なロゴの提案を行うことを目的に研究が進められている。
一方で,ロゴの配色によるBP知覚の変化やそれらがブランド態度に与える影響は,積極的な議論が進められているとはいい難く,ロゴの配色とBP知覚に関する研究群には以下2つのリサーチギャップがある。1点目は,特定の色の組み合わせに依存しない,より一般化を考慮した議論である。先述のDew et al.(2022)は,実際のロゴを用いており,その配色についても個々の色の組み合わせをベースに議論が進められている。そのため色相差などに注目したより一般的な視点からBP知覚との関連を議論した研究は現時点では行われていない。先述のJeon et al.(2020)や Huang et al.(2020)では色相差を用いて配色が消費者にもたらす効果を検討することで,特定の色の組み合わせに依らない形で議論を行っていることからも,配色とBP知覚との関係においても色相差を用いた検証を行うことで,一般性を高めた議論を可能にする。
2点目は,配色とBPの適合がもたらす下流効果やそのメカニズムに対する理解である。Dew et al.(2022)の目的は,BPに適合するロゴの提案であり,ロゴとBPの適合がもたらす効果については議論をしていない。加えて,配色とBP知覚の適合関係における下流効果を対象とした研究は,管見の限りにおいて確認できていない。近年の行動科学領域では,ある現象による効果が作用するメカニズムを理解する研究が増加している(Hayes & Rockwood, 2020)。加えてビジュアル・マーケティングにおいて,消費者のメカニズムを解明することは,その基盤であることを踏まえると(里村,2017),配色を含めたロゴの諸要素とBPの適合に焦点を当てるのみならず,その適合がもたらす影響についてメカニズムを含めた議論を行うことは消費者の行動をよりよく理解するために重要である。
そこで本研究は,これら2つのリサーチギャップを克服すべく,色相差に注目をしたロゴの配色を対象に,ロゴの配色とBP知覚の適合関係を捕捉するのみならず,メカニズムを含めた下流効果の影響を捉えることを目的とする。
色相環の隣接する2色を用いた配色である類似色相配色は,快適さ(Birren, 2013)や,調和感知覚を高める(Ou & Luo, 2006;Schloss & Palmer, 2011;Szabó et al., 2010)。消費者行動研究でも,色相差の小さいロゴは,色相差の大きいロゴに比べて,調和感知覚を高めることが確認されている(Jeon et al., 2020)。また,ロゴの形状を用いた研究では,調和感知覚が洗練のBPに影響をもたらすことが示されている。Bajaj and Bond(2018)は,ロゴにおける調和感知覚が,形状の対称性によって生起されるという知見(Henderson & Cote, 1998)を援用し,対称形のロゴと洗練のBPの間に強い関係があることを示している。これらの研究を統合して考えると,調和度が高い類似色相配色をロゴに用いることで,洗練のBPと適合的な関係を作り出すと考えられる。そこで,以下の仮説を導出する。
H1a:類似色相配色を用いたロゴは,洗練のBPと適合する。
色相環の対角線上にある2色を用いた配色である補色色相配色は,ダイナミックな印象(神作,1963)のみならず,消費者の目を引き(Birren, 2013),覚醒度を高める(Huang et al., 2020)。覚醒度の高さは人々を興奮状態(Gorn et al., 1997)にするだけではなく,企業の性格的特徴にも影響をもたらす。ロゴの非対称性に注目したLuffarelli et al.(2019)は,覚醒度を高める非対称形のロゴが興奮のBPと適合的であることを示した。彩度を用いた研究でも高彩度であることが消費者の注意を引くことや(Hagtvedt & Brasel, 2017),覚醒水準を高め(Valdez & Mehrabian, 1994),興奮のBPに寄与することが確認されている(Labrecque & Milne, 2012)。
これらの知見を踏まえると,補色色相配色を用いたロゴも,人々の注意を引きつけ,覚醒度を高めることから,興奮のBPと適合的な関係になることが予想される。そこで,以下の仮説を導出する。
H1b:補色色相配色を用いたロゴは,興奮のBPと適合する。
では,ロゴの配色とBPが適合している場合,ブランド態度にどのような影響を与えるだろうか。既存研究では,CRMの支援対象と支援内容の抽象度(寺﨑・石井,2018)や,食品とフォント(Li et al., 2020),広告メッセージで訴求する便益と広告の色使い(Wang et al., 2020)など,マーケティング刺激の要素間の適合により,消費者が当該の製品やブランドに対して肯定的な反応を示すことが明らかになっている。加えて,BPを対象とした研究でも,音色(Melzner & Raghubir, 2023)や味覚(Motoki et al., 2023)がBPと適合することで,消費者の肯定的な反応につながることを確認している。
これらのことから,本論文で注目するロゴの配色とBPの関係も,それぞれの配色から知覚される印象とBPの適合により,ブランド態度を向上させることができると考えられる。そこで,以下の仮説を導出する。
H2:ロゴの配色とBPが適合関係にある時(類似色相配色×洗練/補色色相配色×興奮)は,適合関係にない時(類似色相配色×興奮/補色色相配色×洗練)に比べて,ブランド態度を高める。
本論文では,先述の通りロゴの配色とBPの適合がブランド態度に与える影響について,そのメカニズムも検証する。既存研究では,複数の要素の一致や適合により適切感(feeling right)が醸成されることを明らかにしてきた。例えば,先述した広告メッセージで訴求する便益の種類と広告上の色使い(Wang et al., 2020)のみならず,書字方向と時間概念(Deng et al., 2019),書字方向と製品の向き(Monahan & Romero, 2020),製品価格と消費者の意思決定モード(Wadhwa & Zhang, 2015),製品価格と背景色(河股,2023)など,要素間で適合関係にあるときに適切感が醸成され,この適切感により消費者は対象への評価を高めることが示されている。本論文で注目するBPにおいても,Mandal et al.(2021)は,自己の特徴が先天的(後天的)であると考える消費者は有能(興奮)のBPと適合関係にあること,また,適合関係にある時に適切感が高まり,ブランド推奨意向が強まることを示している。
要素間の適合により適切感が高まることを示した上述の研究と同様に,ロゴの配色とBPが適合することで適切感が高まり,その結果としてブランドへの態度が向上すると考えられる。そこで以下の仮説を導出する。
H3:ロゴの配色とBPの適合関係がブランド態度に与える影響は,適切感によって媒介される。
上記3つの仮説を検証するために,4つの実験を実施する。
実験1aの目的は,ロゴの配色によってBP知覚が変化するかを確認することである。本論文では,洗練と興奮の2つのBPを対象に仮説を設定しているが,Luffarelli et al.(2019)のように,実験の初期の段階では,仮説の設定に関わらずAaker(1997)が挙げる5つすべてのBPを対象に実験を行う研究もある。そこで,実験1aでも同様に5つのBPを用いて実験を行う。
実験1aは2023年10月に日本国内で実施された3)。実験の手順は以下のとおりである。後述する4種類のロゴのうちいずれか1つを提示し,そのロゴを採用するブランドの性格的特徴についてAaker(1997)及び,白井(2006)を参考に,質問を行った。なお,すべての質問は7段階のリッカート尺度を用い,「1:全く当てはまらない」~「7:非常に当てはまる」で回答してもらった。また,提示したロゴの形状および配色は以下のとおりである。ロゴは,2つのひし形をモチーフとし,ロゴの配色が類似色相配色あるいは補色色相配色となるように色を設定した。また,使用する色固有の効果を防ぐために,配色ごとにそれぞれ2つのロゴを作成した。具体的には,類似色相配色では,色相の値が90と105の組み合わせ,あるいは,270と285の組み合わせの配色とした。一方で,補色色相配色のロゴは,90と270あるいは,105と285の組み合わせとした。また,明度は49,彩度は100に設定した。なお,本論文では,すべての実験においてロゴは架空のものを作成した(具体的な形状と配色は付録1参照)。実験には361名が参加し,分析には回答不備あるいは,アテンションチェックとして設けた課題(提示されたロゴを選択する課題)に適切に回答できなかった34名を除いた,327名(平均年齢:38.91歳,男性:134名/女性:190名/その他:3名)を対象とする。また,分析に当たっては,各構成概念の下位尺度の平均値を用いる。
4.2 結果分析に先立ち,Grohmann et al.(2013)を参考に,BPごとの信頼性係数を確認する。その結果,5つすべてのBPにおいて,クロンバックのα係数が,尺度の信頼性が許容される水準である0.7以上であることが確認できた(洗練:0.827,興奮:0.865,誠実:0.821,有能:0.901,たくましさ0.7174))。
続いて,ロゴの配色が,BP知覚に与える影響を検証する。実験1aでは4種類のロゴを作成しているが,本論文の目的は配色の違いによるBP知覚の影響を捕捉することであるため,個別のロゴごとに分析するのではなく,類似色相配色のロゴを提示されたグループと,補色色相配色のロゴを提示されたグループの2つのグループで群分けを行い,分析を実施する。分析結果は以下のとおりである。洗練のBP知覚は,類似色相配色を用いたロゴのほうが(M = 3.921,SE = 0.065),補色色相配色を用いたロゴ(M = 3.721,SE = 0.080)より,高い値であった(t(325) = 1.974,p = 0.049,Cohen’s d = 0.218)。一方で興奮のBP知覚は,補色色相配色を用いたロゴのほうが(M = 4.378,SE = 0.068),類似色相配色を用いたロゴ(M = 4.072,SE = 0.068)よりも高い値であることが確認できた(t(325) = 3.188,p = 0.002,Cohen’s d = 0.352)。
続いて,仮説を設定していない3つのBPについて確認を行う。ロゴの配色方法により,誠実及び有能のBP知覚に統計的な有意差を確認することはできなかった(誠実:M類似 = 4.002,SE = 0.058 vs. M補色 = 3.843,SE = 0.058,t(325) = 1.938,p = 0.053,Cohen’s d = 0.214,有能:M類似 = 4.183,SE = 0.061 vs. M補色 = 3.990,SE = 0.083,t(325) = 1.876,p = 0.062,Cohen’s d = 0.207)。一方で,たくましさのBPは,類似色相配色のロゴ(M = 3.443,SE = 0.068)より,補色色相配色を用いたロゴ(M = 3.804,SE = 0.070)のほうが,高い値を示した(t(325) = 3.700,p < 0.001,Cohen’s d = 0.408)。
実験1bは,実験1aの課題を克服する形でロゴの配色とBPの適合関係を捕捉することを目的とする。実験1aには,以下の課題がある。1点目が,実験1aで使用したロゴの色や形状に関する課題である。実験1aでは,緑系と紫系の2色を用いたひし形のロゴを実験刺激に採用した。加えて,各ひし形で使用された色の位置も固定していた。そのため,実験1aの結果は,ロゴの色や形状,用いられた色の位置によって何らかの影響を受けている可能性がある。そこで実験1bでは,これらを考慮した実験を行う。2点目は実験の方法に関する課題である。実験1aでは,提示されたロゴを起点としてその配色から知覚されるBPの程度を実験参加者に回答してもらった。しかし,BPを基軸としてそれにふさわしいロゴを選択する実験形式でも,ロゴの配色とBP知覚の適合を捕捉することができる。このように,ロゴの配色とBP知覚の適合関係をより精緻に検証するためには,多面的に適合関係を確認する必要がある。これらの課題を踏まえ,実験1bを実施する。
実験1bは,2023年11月に実施された。実験の手順は以下のとおりである。初めに,BPに関する語句を含めたメッセージを1つ実験参加者に提示した。その後,提示されたメッセージを有するブランドにふさわしいロゴを1つ選択してもらった。ブランドの特徴を示すメッセージは,Sharma and Varki(2018)を参考に,「正直なブランド(誠実)」,「創造的なブランド(興奮)」,「信頼できるブランド(有能)」,「エレガントなブランド(洗練)」,「頑強なブランド(たくましさ)」とした。また,ロゴは,2つの円を上下斜めに配置したものを作成した。ロゴの色には,明度(76)と彩度(65)を固定した赤系2色(色相345/360)と緑系2色(色相165/180)の計4色を用いた。類似色相配色における色相は345と360あるいは,165と180の2パターンとし,補色色相配色では,345と165あるいは,360と180の2パターンを用いた。なお,色が施されている位置の効果を防ぐために,例えば,上のモチーフの色相を345,下のモチーフの色相を360としたロゴと,上のモチーフの色相を360,下のモチーフの色相を345としたロゴのように,上下のモチーフで用いられる色を反転させた2種類のロゴを配色ごとに作成した(具体的なロゴの形状や配色は付録2を参照)。このように作成されたロゴのうち類似色相配色及び補色色相配色のロゴをそれぞれ1種類ずつ提示し,どちらが上記のメッセージを有するブランドにふさわしいかを選択してもらった。なお,2つのロゴは左右に提示されるが,その位置はランダム化している。
実験には,344名が参加し,分析には回答不備やアテンションチェックとして設けた課題(提示されたブランドの特徴を示すメッセージを選択する課題)に適切に回答できなかった57名を除く,287名(平均年齢:39.90歳,男性:129名/女性:155名/その他:3名)を対象とした。
5.2 結果提示されたメッセージのBPごとに,配色の異なる2つのロゴの選択率にどのような違いがあるのか1サンプルの比率の差の検定を用いて分析した5)。その結果,洗練のBPを訴求した場合は,類似色相配色のロゴのほうが(36名,63.16%),補色色相配色のものよりも(21名,36.84%)選択確率が高く(χ2 = 3.947,p = 0.047,Cramer’s V = 0.263),興奮のBPを用いた場合は,補色色相配色のロゴの選択確率が(43名,78.18%),類似色相配色のロゴの選択確率よりも(12名,21.82%)有意に高いことが確認された(χ2 = 17.473,p < 0.001,Cramer’s V = 0.564)。一方で,誠実(類似色相配色:26名,48.15% vs.補色色相配色:28名,51.85%,χ2 = 0.074,p = 0.785,Cramer’s V = 0.121),有能(類似色相配色:31名,46.27% vs.補色色相配色:36名,53.73%,χ2 = 0.373,p = 0.541,Cramer’s V = 0.075)及び,たくましさ(類似色相配色:23名,42.59% vs.補色色相配色:31名,57.41%,χ2 = 1.185,p = 0.276,Cramer’s V = 0.148)を訴求した場合は,2つのロゴの選択確率に統計的な有意差は確認できなかった。
5.3 小括実験1a及び実験1bの結果をまとめると,表1のように示される。これらの結果から,洗練のBPは類似色相配色と,興奮のBPは補色色相配色と適合関係にあるとみることができる。すなわち,2つの実験を通してH1a及びH1bが支持されたと判断できる。
| 実験1a | 洗練 | 興奮 | 誠実 | 有能 | たくましさ |
|---|---|---|---|---|---|
| α係数 | 0.827 | 0.865 | 0.821 | 0.901 | 0.717 |
| 類似 | 3.921 | 4.072 | 4.002 | 4.183 | 3.443 |
| 補色 | 3.721 | 4.378 | 3.843 | 3.990 | 3.804 |
| p値 | 0.049 | 0.002 | 0.053 | 0.062 | <0.001 |
| Cohen’s d | 0.218 | 0.352 | 0.214 | 0.207 | 0.408 |
| 実験1b | 洗練 | 興奮 | 誠実 | 有能 | たくましさ |
|---|---|---|---|---|---|
| 類似 | 36(63.16%) | 12(21.82%) | 26(48.15%) | 31(46.27%) | 23(42.59%) |
| 補色 | 21(36.84%) | 43(78.18%) | 28(51.85%) | 36(53.73%) | 31(57.41%) |
| p値 | 0.047 | <0.001 | 0.785 | 0.541 | 0.276 |
| Cramer’s V | 0.263 | 0.564 | 0.121 | 0.075 | 0.148 |
※「類似」は類似色相配色,「補色」は補色色相配色を示す。また,実験1aの類似及び補色の箇所に示されている数値は,それぞれのブランド・パーソナリティ知覚の平均値であり,実験1bの箇所ではそれぞれのブランド・ロゴの選択人数及び選択確率である。
なお,誠実及び有能のBPは実験1a及び実験1bいずれも,配色による影響を確認できなかった。一方で,たくましさのBPは実験1aと1bで異なる結果を示した。その理由として以下が考えられる。実験1aでは,彩度が高い緑色を使用したため,実験参加者はその色から緑葉や芝などをイメージした可能性がある。緑色はアウトドアなイメージとの関連性が指摘されており(Clarke & Costall,2007),アウトドアなイメージはたくましさのBPの下位概念でもあることから両者は概念的に結びつきやすい。そのため,実験1aでは,アウトドアなイメージが補色色相配色を用いた2つのロゴの両方で生起されてしまい,たくましさ知覚に影響を及ぼしたと考えられる。一方で,類似色相配色のロゴでは,アウトドアなイメージを生起させる緑色のロゴが1種類しかなく,もう1種類のロゴは紫系の色のみで構成されていた。そのため,類似色相配色のロゴでは,緑色から知覚されるたくましさへの影響が限定的であったと考えられる。これらのことから,実験1aにおけるたくましさ知覚の差が2つの配色間で生まれたと考えられる。
一方で,実験1bでも緑系の色を用いたが,実験1aで使用した色よりもくすんだ緑色を採用したため,アウトドアなイメージを実験参加者が持たず,たくましさの知覚に繋がらなかったと考えられる。
ここまで,実験1aと1bを通じて,洗練のBPと類似色相配色及び,興奮のBPと補色色相配色の間で適合関係にあることが確認された。続く実験2では,ロゴの配色と形状の2要因を操作し,BPとの適合関係をより精緻に捕捉することを試みる。
実験2の目的は,ロゴにおける配色と形状の2つの要因が,BP知覚に与える影響を検討することである。3章でも述べたとおり,対称形のロゴは洗練のBPと(Bajaj & Bond, 2018),非対称形のロゴは興奮のBP(Luffarelli et al., 2019)と関連が強い。そこで実験2では,ロゴの配色と形状の対称性の2つの要因を組み合わせた実験を実施し,配色と形状の2要因がBP知覚に与える影響がそれぞれ独立したものであるのか,あるいは交互作用があるのかを確認する。
実験2では,形状の異なる2つのロゴを作成した。いずれも2つの円環と2つの三角形から構成されており,1種類は対称形のロゴ,もう1種類は非対称形のものである。また,形状の異なる2種類のロゴそれぞれに対して,異なる配色を施した。類似色相配色のロゴでは,三角形の色相を230,円環の部分の色相を215とした。また,補色色相配色のロゴでは,三角形の色相は230,円環の部分の色相を50とした。なお,各パーツの明度は100,彩度は73とした(具体的なロゴの形状は付録3参照)。
実験は2024年10月に以下の手順で行った。実験参加者には,4種類(形状:対称or非対称/配色:類似色相or補色色相)の架空のロゴのうち1つが提示された。その後,提示されたロゴを採用している企業のイメージについて質問を行った。質問項目は,実験1aと同様のものを使用し,洗練及び興奮のBPに関する項目に限定して質問した。
実験には,353名が参加し,分析には回答不備やアテンションチェックとして設けた課題(提示されたロゴを選択する)に適切に回答できなかった23名を除く,330名(平均年齢:41.53歳,男性:184名/女性:144名/その他:2名)を対象とした。
6.2 結果はじめに,洗練及び興奮のBPについて実験1a同様に尺度の信頼性を確認した。その結果,両方のBP共に,クロンバックのα係数が0.8を上回っていた(洗練:0.866,興奮:0.922)。
続いて,ロゴの配色や形状がそれぞれのBP知覚に与える影響を確認する。その結果,いずれのBPにおいても,配色と形状の交互作用は有意な値を示さなかった(洗練:F(1, 326) = 0.188,p = 0.665,興奮:F(1, 326) = 0.014,p = 0.905)。一方で,配色(洗練:F(1, 326) = 9.742,p = 0.002,興奮:F(1, 326) = 12.009,p = 0.001)及び,形状(洗練:F(1, 326) = 5.180,p = 0.023,興奮:F(1, 326) = 35.675,p < 0.001)の主効果が,5%水準で統計的に有意な値であった。
主効果のみが有意であったことから,BPごとに主効果がもたらす影響を確認したところ以下の通りであった。初めに,洗練のBPであるが,類似色相配色(M = 4.221,SE = 0.072)のロゴのほうが,補色色相配色(M = 3.910,SE = 0.069)のものよりも値が高く(t(326) = 3.121,p = 0.002),対称形(M = 4.179,SE = 0.069)のロゴのほうが,非対称形(M = 3.952,SE = 0.072)のものよりも値が高かった(t(326) = 2.276,p = 0.023)。
一方で,興奮のBP知覚を見てみると,補色色相配色のロゴのほうが(M類似 = 4.386,SE = 0.066 vs. M補色 = 4.719,SE = 0.070,t(326) = 3.465,p = 0.001),また,非対称形のロゴのほうが,高い値を示した(M対称 = 4.265,SE = 0.070 vs. M非対称 = 4.840,SE = 0.066,t(326) = 5.973,p < 0.001)。なお,それぞれの平均値については図1のとおりである。

以上のことから,配色と形状がもたらすBP知覚は,交互作用は認められず,2要因の主効果のみが現れることが明らかとなった。
続く実験3では,ロゴの配色とBPの適合関係がブランド態度に与える影響及び,そのメカニズムを検討する。
実験3の目的は,ロゴの配色とBPが適合関係にある時,ブランド態度に与える影響を明らかにすることである。また,その心理的メカニズムも確認する。本論文では,ロゴの配色とBPの適合関係がもたらす効果を説明するメカニズムとして「適切感」に注目する。複数の要素間の適合は「処理の流暢性」を高め,消費者の好意的な態度を引き出すことも知られている(Sunaga, 2018;Sunaga et al., 2016)。両者は類似した概念として捉えられるが,適切感は提示された要素が適切に組み合わされているかに関するものであり,処理の流暢性は適合関係が情報処理を促進させることを説明する点において相違がある。本論文では,BPとロゴの配色の適合関係において,「2つの要素が適合している」と知覚する適切感が好意的態度をもたらすメカニズムであると想定しており,情報処理が促進されることの影響ではないと考えている。そのため,代替説明変数としての処理の流暢性を測定し,適切感との比較においてH3の妥当性を検証する。
実験3は2024年10月に実施された。実験の手順は以下のとおりである。後述する16種類のシューズブランドのポスターのうちいずれか1つを提示し,そのシューズブランドへの態度などを質問した。ブランド態度は,Mitchell(1986)を参考に,「1:悪い-7:良い」「1:嫌い-7:好き」「1:好ましくない-7:好ましい」の3項目を質問した(α = 0.927)。また,適切感はCesario et al.(2004)を参考に,「しっくりくる」「違和感がある(逆転項目)」の2項目を用い「1:全くそう思わない」~「7:非常にそう思う」を用いて測定した(r = 0.762)。さらに,処理の流暢性は,Graf et al.(2018)を参考にポスター内に書かれている内容について「1:難しい-7:簡単」「1:不明瞭-7:明瞭」「1:流暢に捉えにくい-7:流暢に捉えやすい」「1:努力が必要-7:努力が不要」「1:理解しにくい-7:理解しやすい」の5項目(α = 0.946)を用いて測定した。
ポスター内には,それぞれのBPを訴求するメッセージを記載した。洗練のBPを訴求する際は,「我々は,ハイクラスな手法と洗練されたデザインに基づき,気品あるデザインのシューズを提供します」とし,興奮のBPを訴求する際は「我々は,斬新な手法とユニークなデザインに基づき,創造的なデザインのシューズを提供します」とした。
ポスター内で提示するロゴは,2つのモチーフを上下に配置したものを作成した。いずれのロゴにおいても明度と彩度は,それぞれ95,65に設定し,類似色相配色の色相は青系の187と202の組み合わせ,あるいは,赤系の7と22の組み合わせを採用した。また,補色色相配色の色相は,7と187の組み合わせ,あるいは,22と202の組み合わせを用いた。なお,2つのモチーフの色の上下による効果を排除するため,実験1b同様上下の色相を入れ替えたロゴも作成している。そのため,今回使用するポスターは,2種類のBPに基づくメッセージ(洗練/興奮)×2種類の配色(類似色相配色/補色色相配色)×2パターンの色の組み合わせ×各モチーフで使用される色の上下の位置の2パターンの計16パターンであった(具体的な形状と配色は付録4参照)。実験には362名が参加し,分析には回答不備がある,あるいは,アテンションチェックとして設けた課題(提示されたブランドが訴求するメッセージを選択する)に適切に回答できなかった22名を除いた,340名(平均年齢:44.96歳,男性:156名/女性:178名/その他:6名)を対象とする。また,分析に当たっては,各構成概念の尺度の平均値を用いる。
7.2 結果はじめに,ロゴの配色とBPの2つの要因がブランド態度に与える影響を検討するため,二元配置分散分析を実施した。その結果,配色とBPの交互作用のみが統計的に有意な値であり(F(1, 337) = 8.128,p = 0.005),配色(F(1, 337) < 0.001,p = 0.995)及び,BP(F(1, 337) = 0.718,p = 0.397)の主効果は統計的に有意な結果を示さなかった。交互作用項が有意であったことから,単純主効果分析を実施したところ,洗練のBPを用いたメッセージの場合は,類似色相配色を用いたロゴのほうが(M = 4.058,SE = 0.124),補色色相配色を用いたロゴよりも(M = 3.703,SE = 0.127),有意にブランド態度が高く(F(1, 337) = 4.011,p = 0.046),興奮のBPを用いた場合は,補色色相配色を用いたロゴのほうが(M = 4.165,SE = 0.124),類似色相配色を用いたものよりも(M = 3.808,SE = 0.125),ブランド態度が高いことが示された(F(1, 337) = 4.119,p = 0.043)(図2上)。これにより,ロゴの配色とBPが適合関係にある時,ブランド態度が高まるという,H2が支持された。

続いて,適合関係にある時に適切感を媒介してブランド態度に影響するというメカニズムを確認するため,配色とBPの適合(非適合:0/適合:1)を独立変数,ブランド態度を従属変数,適切感を媒介変数とする,媒介分析を行った(PROCESS model 4, Hayes, 2017)。はじめに,2つの要素の適合がブランド態度に与える影響を確認したところ,正に有意な関係であった(β = 0.306,SE = 0.125,t = 2.854,p = 0.005)。続いて,ロゴの配色とBPの適合が,適切感に正に有意な影響を与えること(β = 0.356,SE = 0.121,t = 2.953,p = 0.003),また,適切感がブランド態度に正の影響を与えていることが確認できた(β = 0.615,SE = 0.044,t = 14.332,p < 0.001)。さらに,Bootstrap法5,000回リサンプリングによる間接効果を確認した結果,適切感による間接効果は95%信頼区間で0を含まない正に有意な値であり(β = 0.195,SE = 0.066,95%CI[0.070,0.323]),媒介変数を加えた時の直接効果は5%水準で統計的に非有意であることが確認された(β = 0.111,SE = 0.100,t = 1.298,p = 0.195)(図2下)。これにより,ロゴの配色とBPの適合がブランド態度に与える影響は,適切感を媒介するというH3は支持された。
一方で,処理の流暢性を媒介変数として用いた場合,以下のような結果であった。ロゴの配色とBPの適合が,処理の流暢性に与える影響は正の値を示したものの,5%水準で統計的に有意な値ではなかった(β = 0.194,SE = 0.140,t = 1.801,p = 0.073)。一方で,処理の流暢性はブランド態度に正の影響を与えることが確認できた(β = 0.567,SE = 0.038,t = 15.123,p < 0.001)。また,適切感を媒介変数とした分析同様,Bootstrap法を用いた5,000回のリサンプリングによる間接効果を確認した結果,処理の流暢性による間接効果は,95%信頼区間で0を含む結果であり(β = 0.123,SE = 0.068,95%CI[−0.011,0.257]),媒介変数を加えた時の直接効果は依然として正に有意であった(β = 0.213,SE = 0.097,t = 2.201,p = 0.028)。
本論文では,ロゴで使用される色のうち,2色配色に注目し,配色とBP知覚の適合ならびに,その適合関係が消費者のブランド態度にもたらす影響を検討した。実験1a,1b及び,実験2を通じて,類似色相配色と洗練のBP,補色色相配色と興奮のBPの間に適合関係を見出すことができた。また,実験3では,これまでに得られた知見を活用し,ロゴの配色とBPの適合が,ブランド態度を向上させること,そしてそのメカニズムとして,適切感が媒介することを確認した。適切感がメカニズムとして機能した理由は次のように考えられる。先述したMandal et al.(2021)では,消費者の知能観(自己の特徴の先天性)と,複数のBPを訴求するメッセージを用いた広告がもたらす適合を検討しており,それぞれの知能観と,メッセージ内で強調されたBPが適合状態にある時に適切感を高めることを確認している。Mandal et al.(2021)が実験で使用したメッセージは,複数のBPをメッセージで訴求していることから,メッセージ内で訴求される内容が複雑であった。一方,本論文の実験3では,BPを訴求するメッセージ(文字)とロゴ(画像)の2つを同時に提示した。文字情報と画像情報の両方がブランドに関する情報であったことから,実験参加者にとっては,ブランドに関する情報が複雑に提示されている状態であったと想定される。そのためMandal et al.(2021)の結果と同様に,適切感が有意な結果を示した理由と考えられる。
本論文の学術的意義として以下の3点が挙げられる。1点目は,ロゴの配色がBP知覚に与える影響を検討した点である。これまでロゴの色に注目した研究は,単色の影響を考慮した研究が多かった。また,機械学習を用いてロゴの諸要素とBPの関係を議論したDew et al.(2022)では,配色の効果について個別の色の組み合わせを中心に探索的な側面からモデル構築を行っている。それに対して,本研究では色相差に注目しながら,より一般化できる形で議論を行った。加えて,配色とBPの適合の効果についてロゴの配色の視点からの検討(Study1a)と,BPの視点からの検討(Study1b)を組み合わせることで多面的に捕捉することを試みた。さらに,本論文では配色とBPの適合に焦点を当てるのみならず,下流効果やメカニズムまで検討した。そのため,本論文は,これまでの研究で議論がされていなかった配色とBPの適合関係が消費者にもたらす影響にまで踏み込んで検討し,既存の知見を拡張することができたといえる。加えて,本論文は,明度や彩度を固定し,色相に基づく配色の効果とBPの関係を捕捉した。どのような色相に基づく配色が消費者のBP知覚に変化をもたらすかをダイレクトに検討した本論文は,色相を用いた配色研究の進展に寄与できると考えられる。
また,これまでの色相を対象とした研究は,消費者(Jeon et al., 2020;河股・守口,2024)や,製品(Huang et al., 2020;Martinez et al., 2021)の特性に基づいた検討がなされていたが,配色が企業特性に与える影響についてはさほど議論が進められてこなかった。一方で,本論文は企業特性であるBPによって用いるべき配色が異なることを示している点で,配色を用いたマーケティング研究を進展できたと考えられる。
2点目として,ロゴの配色という視覚的な訴求と,BPという認知的な訴求の適合による効果を検討した点が挙げられる。複数の感覚間の適合による効果は,感覚間相互作用として精力的に研究が進められているが,感覚と認知の相互作用の重要性も近年では説かれている(Luffarelli et al., 2019)。本論文は,この主張に応える形となっており,感覚刺激と認知的な訴求の組み合わせを検討する研究群に新たな知見を追加することができたといえよう。
最後の3点目として本論文では適切感をメカニズムに据え,その下流効果も確認した点が挙げられる。実験3では,ロゴの配色とBPという要素間の適合によって適切感が高まり,その下流効果として,ブランド態度の向上を確認した。この結果は,近年議論が増えつつある概念である適切感を用いた研究の寄与に繋がると考えられる。
実務的な意義としては,以下の点が挙げられる。1点目は,本論文の知見は,新ブランドの構築時に有用であるというものである。新規ブランドは,ブランドが訴求したい性格的特徴を消費者に伝えることが困難であると推察される。そういった状況下で,本論文の知見は,洗練や興奮のBPを訴求したい新規ブランドにとって,どのような配色をロゴにあしらうかの指針となるであろう。また,本論文の知見はロゴの変更を検討する企業にとっても有用であると考えられる。特に,実験2では,ロゴの配色と形状の2要因がBP知覚に与える影響を検討したが,交互作用が確認されず,それぞれの主効果のみが有意であった。これは,ロゴの変更を通じてBP知覚を変化させようと考える企業にとって有益な知見であると言えよう。ロゴの変更を行う場合は,配色と形状の両方を変更させることは必ずしも望ましくないと考えられる。それは,これまでにブランドが構築してきたイメージを大きく損ねてしまう可能性が示唆されるためである。一方で,形状と配色のいずれかの要因を変化させることで,BP知覚が変化させられることを確認した本論文は,ロゴの形状の変更が難しいと考える企業にとって,配色という別の要素を通じてブランドの印象を変化させられる可能性を提案している。この点において,ロゴの変更を画策する企業にとっては有益な知見を提供できるだろう。
一方で,本論文には以下で挙げる限界や,今後検討すべき課題もある。1点目は,配色を中心とした課題である。例えば,明度や彩度を組み合わせたさらなる配色の効果の探求が挙げられる。既存研究では彩度が高まることで人々の覚醒度を高めること(Gorn et al., 1997)が指摘されており,覚醒度の高まりにより興奮のBP知覚が高まることが示されている。この点を踏まえるのであれば,色相に基づく配色と彩度を組み合わせながら,興奮のBP知覚に与える影響を確認することもできるであろう。
また,3色以上の配色を用いた検討も行っていく必要もある。既存研究では,主に単色がBP知覚に与える影響に焦点が当てられていたことから,本論文では2色配色を用い,これまでの議論を拡張した。一方で,3色以上の配色を用いたロゴも多くあり,これらについては本論文では検討を行っていない。そういったことから,今後は3色以上の配色を用いた場合におけるBP知覚の変化を明らかにしていくことで,より豊かな議論や実務的な援用も可能になると考えられる。
2点目の今後検討すべき課題として,BPを中心とした議論の必要性が挙げられる。特に誠実,有能及びたくましさのBPに影響を与える配色の究明が挙げられる。本論文では洗練と興奮のBPを対象としており,残る3つのBPについては積極的な議論を行わなかった。また,色相を用いた配色は今回取り上げた2種類の配色以外にも,類似色相配色と補色色相配色の中間的な位置にある中差色相配色など,さまざまな配色が挙げられる。これらの配色を用いることで,今回検討ができなかったBP知覚にどのような影響を与えるかも議論が可能であろう。
加えて,特定の色相が与えるBP知覚との関連についても検討する必要がある。本論文では,色相差に注目していることから,それぞれの色相が持つ固有のイメージに関する議論は行わなかった。しかし,類似色相配色を用いたロゴは似た2色が用いられることから,実験1aの結果でも一部示されたように,固有の色が持つイメージが消費者のBP知覚に強く影響しうることも考えられる。本論文では,複数の実験を通じてさまざまな色相を用いることで,この点を克服することを試みたが,同一の実験で複数の色相を用いることで,この点についてより厳密な知見を得ることができたといえよう。
さらに,ロゴの配色方法として,メインカラーと背景色という形で配色を用いることもある。そのような際に,メインカラーとして採用された色相が持つイメージの影響が強く表れることも想定される。これらの点を踏まえると,誠実や有能,たくましさといったBPを訴求する色をメインカラーに据えた配色を用いることで,これらのBPの訴求につながる可能性もあるだろう。
最後に3点目として,代替変数に関する厳密な議論が挙げられる。処理の流暢性は,実験3で行った実験参加者に対して主観的に回答を行ってもらうほかにも,反応速度など客観的指標としても取得できる。これらの複合的なデータを用いることで,より精緻に代替変数の検討が可能になると考えられる。
本論文の掲載にあたり,編集委員の先生方及び,二人の査読者から大変有益なコメントを頂きました。深く感謝申し上げます。



