抄録
流通の各段階で発生する情報の伝達が制約を受けるため、情報を獲得した主体がそれを利益に転換するために取引に介入する結果、流通経路が長くなる。本稿では、1970年代以降30年間の日本の5消費財のパネルデータを用いて、卸売段階数の規定因に関する実証分析を行う。主要な結論は、流通経路の長さが消費地卸の比重と系列化の進展に規定されているということである。また、消費地卸の比重を規定する要因として、地域の需要変動の独立性、下流における広告宣伝活動の重要性および小売店舗数を挙げることができる。これらが消費地卸の情報の価値を左右すると考えられる。さらに、その他卸の比重を規定する要因として、系列化の進展 (を促すのと同じ市場環境要因) 、地域の需要変動の独立性および広告による製品差別化の程度がある。