1999 年 2 巻 2 号 p. 15-28
本稿では, 需要の状態が明らかになる前に生産が完了し, それ以降追加的な生産ができない商品を念頭において, 生産者と小売業者の間での多様な取引様式について検討する.需要の不確実性が大きく, かつ限界生産費用が低い場合, 市場取引のもとでは小売業者の注文量は少なく設定される.その結果, 生産量も少なくなり, それに制約されるため, 多くの需要が生じたとしてもチャネルの販売量や利潤も少なくなる.この状況で, 小売業者から多くの注文を引き出すための方策として返品制と再販制があり, この点において両者は同じ効果を持っている.生産者は返品制や再販制の導入によって, 市場取引の下でよりも多くの利潤を得ることができるのみならず, 消費者厚生もまた向上するのである.