抄録
これまで、SERVQUALに代表されるサービス・クオリティ研究では、サービスの非有形的側面が強調される一方で、有形的な側面はあまり注目されてこなかった。従来のSERVQUALがサービスの有形的側面を「有形性」という単一の次元として捉えてきたのに対し、本研究ではNelson (1970) とZeithaml (1981) の類型を援用して「経験的有形性」「探索的有形性」という2つの有形性次元をSERVQUALに導入した。本研究の目的は、ホテル宿泊客に対する調査から、「経験的有形性」及び「探索的有形性」の構成概念の妥当性を検証するとともに、SERVQUALの各次元が持つ、総合評価への相対的影響度を検討することにある。分析の結果、 (1) 有形性の次元は、顧客がサービスを直接経験することによって評価される「経験的有形性」と、経験せずとも情報探索を通して判断することのできる「探索的有形性」に区分され、 (2) 非有形的な次元に比べ有形的次元の方が全体のサービス知覚、全体満足度、再利用意向に強く影響している点が明らかにされた。