消費は、選択のプロセスである。例えば、消費者が缶コーヒーを買おうとするとき、競合する缶コーヒーのなかから特定の銘柄が選択される。この選択意思決定のメカニズムをとらえることも、たしかにマーケティングの重要な課題である。だが、消費者は選択を望んでいるのではない。消費者は、欲しいものを手に入れたがっているのである。A.F.Firatが言うように、購買意思決定とは、必要をよりよく満たす製品やサービスを選択する意思決定であると同時に、何を必要とするかを確立する意思決定でもある。消費は、このように少なくとも二つの意思決定のための情報処理を通じて達成されるのである。
本稿は、この二つの情報処理の相互の関連性を検討する。二つの情報処理の機構が相互に独立して作動している限り、特定の製品やサービスの購買へと消費者が向かうための中心的なドライビング・フォースを獲得することはできない。だが、両者が相互の作動を触発し合いながら進行するプロセスを形成するとき、消費者は当該の製品やサービスの購買へと向かうことになる。われわれは、今ここで作動している消費欲望の起源を、この自己準拠的な循環する関係に見いだすことができるのである。
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