多数の零細な店舗の存在は、我が国の小売部門の特徴として多くの研究者によって指摘されてきた。京都府でも、 (飲食店を除く) 小売店舗数は1982年の40,896店をピークに、それ以後は減少しており、1997年には32,764店となっている。本稿では、1979年から97年までの京都府の市区別のパネルデータを用い、このような小売店舗数 (または密度) の変化がいかなる要因によってもたらされたかを検討する。主要な結論は、小売店舗密度の低下傾向は1980年代中盤以降の乗用車の普及と住戸あたり面積の拡大という2つの要因によってある程度説明されるということである。これらの要因によって消費者の物流課業遂行能力が向上し、彼らが多くの課業を分担するようになるとともに、大規模店の出店が促されたために店舗数が減少したのである。その意味で、店舗密度の低下は社会経済的環境の変化への適応の結果として解釈することができる。