西洋中世研究
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天上と地上のインターフェイス
奏楽天使の学際的素描
山本 成生
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2012 年 4 巻 p. 78-97

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抄録
 「奏楽天使」とは一般的に,様々な楽器を演奏し,また合唱する天使たちの図像表現とされる。これは中世後期のキリスト教の視覚芸術に頻出するものであるが,その背景には,いわゆる「危機の時代」に広まった「信仰の個人化」という現象が存在していた。この時代において「図像」はテクストに付された単なる装飾ではなく,「神へいたる手段」として本質的な機能を有していたのである。
 このような奏楽天使の図像は,現代に伝わらない楽器の復元について有益な情報を提供してくれる一方で,当時の演奏実践とは掛け離れた表現も多く,またそこに含まれる象徴的意味の問題など,その解釈は容易ではない。そこで本論では,奏楽天使を正しい文脈のもとで理解する際に枢要となる情報の整理を行い,ひいては中世・ルネサンス期の社会における,天使と音楽の関係を明らかにすることを目的とする。
 本論は三章からなる。まず,中世の教会音楽の本質は,「天使と共に神を讃える歌」であった点を確認し,当時において,地上の音楽と天上の音楽が相互的なものと理解されていたことを明らかにする。次に,「楽器の選択と配置」という観点を中心に,奏楽天使の図像表現を分析する。製作者は「オー」と「バ」という当時の楽器分類をある程度尊重していた反面,この分類では解釈できない図像も存在していた。それらについては,聖書解釈学における「寓意的」楽器解釈やルネサンス期におけるボエティウス的世界観の再受容が,図像に楽器を氾濫させる要因となったと概定する。最後に,図像やテクスト,音楽的表現の分析から,(図像表現を超えた広い意味での)「奏楽天使」が,中世社会において,天上と地上,神と人間,マクロコスモスとミクロコスモスを繋ぐ「インターフェイス」として機能していた様相を瞥見する。
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© 2012 西洋中世学会
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