抄録
現在,車いす用体圧分散クッションは数多く販売されており,それらは褥瘡の主な原因である圧力の集中を防ぐように設計されている.しかし,それが過ぎると,車いす利用者が走行中に受ける振動は大きくなり,乗り心地を悪くすることにもなる.そこで本稿では,体圧分散効果を維持したまま乗り心地を改善させる目的で,新型のクッションの製作に取り組んだ.そして乗り心地と体圧分散効果を評価した.具体的には頭部と座面部の加速度を計測し,VDV(Vibration Dose Value: 4乗振動適用値)を算出した後,頭部と座面部のVDV振動の減少比VDVR(乗り心地評価)を算出した.また,クッションの有無による接触面積の増加率,ピーク値の減少率を用いて体圧分散を評価した.この評価法を用いて誘導パネル上を走行する際の新型クッションを他の代表的なクッションと比較した.その結果,新型クッションは体圧分散に関し,従来の性能を落とすことなく乗り心地を改善する結果が得られた.このことから新型クッションは乗り心地の良い褥瘡予防用として期待できる.