抄録
Culex pipiensにはいくつかの形態的、生理的、生態的な変異が見られ、それがアカイエカ、ネッタイイエカ、チカイエカなどと称されてCulex pipiens complexを形成している。これらの蚊の違いとされる形質の遺伝について、ネッタイシマカおよびネッタイイエカのRNA由来のcDNAクローンを、制限酵素で切断した染色体DNAにハイブリッドさせた時に見られる多型をマーカーに用いてCx. pipiensのRestriction Fragment Length Polymorphisms(RFLP)連鎖地図を作成し、これをもとに低温短日下での雌成虫における休眠誘起、無吸血産卵、個眼数、発育期間、翅長、雄生殖器のD/V比などの形質に影響を与える遺伝子を探したところ、これらはいずれも複数のQuantitative Trait Loci(QTL)によって決定されていることがわかった。