タイ国のAnopheles barbirostris groupのITS2にみられる反復配列

抄録

Anopheles barbirostris groupは1997-1998年にタイ国のSa Kaeo県で流行したマラリアの媒介者と考えられている．我々はタイ国各地から採集したAn. barbirostris groupの系統を確立し交配実験を行なったところ，それぞれのグループ間で生殖隔離を示す An. barbirostris A1 - A4, An. campestris like の５つのブループにわかれた．さらにそれら系統のミトコンドリアのCOI, COIIとITS2の領域の塩基配列を決定したところ，各グループ間で異なる配列を持つことから，これらの５グループは別種であると考えている．他の多くのAnopheles種はITS2の長さは数百ベースだが，An. barbirostris groupは1000ベースを超える長さのITS2を持っていた．その長さは約100ベースを単位とする反復配列の存在によるものであり，グループにより３～10の反復配列を持っている．また反復配列は配列の違いによりいくつかに分類され，その並び方のパターンもグループにより異なっていた．ミトコンドリアのCOI, COII配列やITS2の反復配列以外の部分との比較によりこれら５つのグループの反復配列の分化を検討してみる．