日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第62回日本衛生動物学会大会
セッションID: A33
会議情報

Anopheles dirusの人家への飛来数を村の地図から予測する
*砂原 俊彦Trung Ho DinhThuan Le Kahn中澤 秀介門司 和彦高木 正洋山本 太郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 ベトナム南部ビンフック省のマラリア流行地にける主なマラリア媒介蚊であるAnopheles dirusの分布について,2009年度大会に引き続き報告する.前回は村間での密度の違いを環境要因によって説明したが,今回は密度が最も高かった1つの村に焦点をあて,村内での人家の分布パターンからA. dirusの飛来数を予測するモデルを提案する.  2006年の雨期にPhu Thuan村全戸の約半数にあたる80軒においてライトトラップを用いて5日間蚊を採集した.A. dirus採集数は他から孤立した家で多く採れる傾向が見いだされ,これは「ある領域から発生した蚊は周辺にある家に均等に分配される」という単純な仮定で説明できると考えられた.この仮定から各家から一定の距離のバッファー内に存在する人家の数(近所の家の数+対象の家;x)とA. dirus飛来数(y)との間に双曲線(y=a/x)の関係が導かれる.バッファーの範囲を50mから1500mまで変えながら最尤法で周辺の家の数と蚊の数プロットに双曲線をあてはめたところ,バッファーを350mとしたときにもっとも当てはまりがよかった.このことはA. dirusがホストを探索して飛翔する範囲が通常数百mのスケールであることを示唆する.  このモデルでは予測に必要なのは人家の分布だけなので,村内の簡易的なマラリアリスクマップの作成に役立つと期待される.ただし媒介蚊発生場所が村内の一部に著しく偏っている場合は予測の確度は低いと考えられる.
著者関連情報
© 2010 日本衛生動物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top