日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: B10
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第63回日本衛生動物学会大会
ウズベキスタンからの輸入回帰熱の1例
忽那 賢志笠原 敬高野 愛大西 真*川端 寛樹
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抄録

回帰熱はボレリア属細菌感染に起因する節足動物媒介性感染症でアフリカを中心に世界で広く見出される一方、我が国では1952年以降、輸入例、国内感染例ともに症例報告はなかった。 2010年10月、奈良県市在住のウズベキスタン(リシタン)へ渡航歴が有る女性が、下肢痛を伴う周期性の発熱により市立奈良病院を受診した。発熱は39~40℃で1~3日間持続後解熱し、10~12日間の無熱期を経て再帰した。周期性の発熱と海外渡航歴からマラリアを疑い血液塗沫標本のギムザ染色を行ったがマラリア原虫は認めず、またマラリア迅速検査キットを用いた迅速検査も陰性であった。ウズベキスタンで乳製品の摂食歴があったため波状熱(ブルセラ症)も鑑別対象としブルセラ凝集反応検査も行ったが結果は陰性であった。このため回帰熱を疑い、発熱期の血液塗沫標本のギムザ染色を行うとともに、血液培養、血清を材料としてボレリアDNAの検出を試みた。その結果、ギムザ染色ではスピロヘータ様の菌体を認めたこと、血液培養ボトルより回帰熱ボレリアDNAが検出されたことから回帰熱と診断し、入院の上MINO 100mg×2/日の点滴投与を開始した。治療開始後にJarisch-Herxheimer反応は見られなかった。治療開始後、周期性の発熱は出現せずMINOは10日間で投与終了とした。また感染ボレリア種はflaB遺伝子の増幅DNAの塩基配列から、Borrelia persicaと同定された。 B. persica感染症はアフリカ北部、中近東、中央アジアを中心に感染例が報告され、病原体ボレリアはOrnithodoros tholozaniにより伝播されることが知られている。我が国ではB. persica感染例を含め、回帰熱ボレリアの感染例報告は初めてであるが、今後は、これら回帰熱流行地ではマダニ刺咬予防を含め、感染防御策を講じることを推奨するとともに、帰国後の周期性発熱を診た臨床医は回帰熱も鑑別に加える必要が有ると思われる。

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© 2011 日本衛生動物学会
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