抄録
激甚津波に見舞われた東北被災地一帯には魚加工場, 冷凍庫が連なっている. 津波で破壊された工場,倉庫,養殖施設から魚介類が広範囲にばらまかれた. 我々は,5月初旬,岩手県から宮城県に至る一帯をめぐり,ハエと蚊の発生状況を調査した.当時,ハエの活動時期ではなかったが散乱している腐敗魚を裏返すと大量のハエ幼虫を確認できた.また,壊れた大型冷凍庫の隙間からハエ幼虫が滝のように流れ落ちていた.この頃,行政には ,住民からハエの苦情は寄せられていなかったが,「ハエ公害」が 1カ月以内に必発であることを述べた. ハエ類の大発生が予測される場所や人家との距離を市町村ごとに地図に書き込み,ハエ防除の資料とした. 腐敗魚介類から発生するハエ類はクロバエ科Calliphoridaeが中心と考えられ,殺虫剤抵抗性の問題はないと予測できた.ただし,港湾地帯で魚介類に依存しているカモメ,トビ,カラスに対する殺虫剤の影響は考慮する必要があった.平成10年施行の「感染症新法」以降,行政には殺虫剤を撒く人も,散布機器も,殺虫剤の備蓄もない.また,被災地は南北 500 kmと長大なため,ハエ防除には全国からPCO企業従業員を呼び寄せ,彼らに当たらせるのが妥当と考えた.幸い,公益法人「日本国際民間協力会」の資金援助を得てハエ駆除は「スピード」と「機動力」をもって実施され,大きな成果が得られた.