抄録
トコジラミのピレスロイド作用点であるナトリウムチャンネル(VSSC)のV429LとL925Iは,ピレスロイド抵抗性に関連付けられるアミノ酸置換変異であることが米国における先行研究により示されている.われわれは2009年からおもに日本ベストコントロール協会を通じて収集した60コロニー分の試料について,VSSC遺伝子上のこれらの変異の国内における分布状況を調べた.2011年9月までに解析分の試料に関して,L925座位のみが変異した単変異ハプロタイプ(I925)を含むコロニーが 50,二重変異ハプロタイプ(L429-I925)を含むコロニーが4つそれらのうち両方を含むコロニーが1つあった,2つの変異ハプロタイプに共通なI925変異を保有するコロニーは,北海道と沖縄県を含む日本各地に蔓延し,全国で 88%に及び,それらのコロニーの多くでI925ホモ接合体が優勢であった,収集試料のうち生きている個体は,あらかじめピレスロイド抵抗性を識別するためのdeltamethrin 0.13mg/cm2濃度によるろ紙継続接触試験に供した,7コロニーに由来する 27個体のI925ホモ接合体うち25個体は処理開始後24時間に生残したことから,今回用いた分子ジェノタイピングはピレスロイド抵抗性の診断法として有用であると考えられる.