抄録
犬と猫はマダニ媒介性人獣共通感染症の伝播にとって重要な役割を果たしている.2001年の疫学調査により,犬と猫に寄生するマダニの種類と地理的分布,寄生に関する疫学的要因等が明らかとなった.今回,前回調査から10年を経た現在の状況がどのように変化しているかを検証した.2011年 4~8月に,全国47都道府県の108動物病院に来院した犬と猫を対象に,動物体表から可能な限り寄生マダニを採取し,70%エタノールに浸潤保存するとともに,採取年月日,寄生が疑われる場所などを記録した.マダニは実体および蛍光顕微鏡を用いて形態学的に種を同定した.北海道から沖縄までの46都道府県,102動物病院に来院した犬730頭から1533個体,猫104頭から242個体のマダニが採取された.最も高頻度に寄生の認められた種は,犬・猫ともにフタトゲチマダニで,犬 434頭から959個体,猫40頭から86個体が回収された.その他に,キチマダニ,クリイロコイタマダニ,ヤマトマダニ,タネガタマダニ等が優勢種として認められたが,寄生種は10年前と比較して変化はなかった.今回,クリイロコイタマダニは沖縄県のほか,和歌山県の犬から検出された.発表では各マダニの分布の他,動物の性別や年齢,寄生が疑われる場所などの解析結果についても報告する.