抄録
近年,牛の放牧場ではマダニ対策が進み,牧野に生息するマダニは減少傾向にある一方で,マダニ生息数が依然として減少しない放牧場が認められる.この原因を明らかにする目的で,東北地方,関東地方および沖縄地方の9カ所の放牧場において調査を実施した.調査項目は,牧野のマダニ数と殺ダニ剤使用状況,面積および野生動物の侵入状況とした.マダニ数は一定時間のフランネル布旗ずり法により調査した.放牧場内への殺ダニ剤投入量は,放牧頭数,一放牧期間の殺ダニ剤投与回数および殺ダニ剤使用継続年数の積として表した.また,殺ダニ剤投入量を放牧場総面積で除した値を放牧場単位面積あたりの殺ダニ剤投入指数とした.殺ダニ剤投入指数とマダニ採集数との関係は,殺ダニ剤投入指数が高い牧場ではマダニ採集数は少なく,低い牧場ではマダニ採集数は多い傾向が認められた.一方,牧野内にニホンジカの侵入が多数認められた放牧場では,殺ダニ剤投入指数が高いにもかかわらず採集マダニ数は多かった.これらの結果から,放牧場での殺ダニ剤使用においては,放牧場単位面積あたりの投入量を考慮する必要があること,また,野生動物の侵入対策の重要性が示唆された.