抄録
目黒寄生虫館では事業の一つとして、異物鑑定を行っている。最近の傾向か、当館の鑑定件数も多くなり、その種類・内容も様々である。最近2年半(平成12年1月~平成14年6月)の間に扱った件数は599件そのうち個人の依頼は約14%(85件)で大部分は水産会社、検査会社、食品会社などの企業からであった。検体の種類は魚・魚介類が大半を占め63%(379件)、虫体そのものが16%(96件)、弁当・惣菜など6%(38件)、畜産品4%(22件)となっている。鑑定内容は、線虫(類線形動物も含む)が最も多く175件でその内訳の多くがアニサキス(Anisakis simplex)とシュウドテラノバ(Pseudoterranova decipiens )で、その割合は57:59とほぼ同率であった。次いで昆虫類、条虫類、甲殻類、環形動物(ミミズ、蛭、ゴカイなど)、吸虫類、原虫類などであった。これらの検体は状態の良いものもあったが、中には乾燥しているもの、砕けたものなど様々で、検査に骨の折れるものも少なくなかった。また、魚の組織の一部、一部、植物の繊維など寄生虫・衛生動物以外のものも含まれ、多様性を極めていた。今回は、これらの中から、なるべく多くの個々の事例を紹介する。