抄録
はじめに
近年、虐待等により乳幼児期から施設入所となる事例が増えている。親の育児能力不足によるネグレクトの為、乳児院より当施設に入所となった事例に対して愛着関係の形成を目標に支援した結果、言語発達、社会性等が目ざましく伸び、地域の小学校の特別支援学級に通学するまでに至ったので報告する。
症例
6歳男児。診断名:水頭症術後、急性硬膜下血腫、脳挫傷後遺症、左片麻痺、知的障害。ネグレクトが予想され児童相談所より指導中であったが、1歳9か月、ベランダより転落、障害が残り2歳で乳児院入所。3歳10カ月で当施設入所。移動はハイハイ、つかまり立ち、言語は喃語、多動が激しく自傷もみられ表情は乏しかった。
取り組み目的:愛着関係の構築・保育士3名を限定し毎日午前中、スキンシップ、言葉かけに重点を置き散歩中心に1対1での関わりをする。・大人との関係から同年齢との関わりを持つ為、入所6ヶ月後保育園に通園する。(週3回)・外出の機会を増やした。・月1回ケース会を行いスタッフ間の対応の統一を図り、KIDS(乳幼児発達スケール)で評価を行う。
結果
取り組みにより言語の増加、興味の拡大、自我の獲得により要求が増え、散歩等により運動機能も高まった。保育園では一人遊びから他児に自ら関わりを持つようになった。KIDSの結果(発達指数39→58)が上がり、人見知り、甘え、他者への思いやり等が現れた。
考察
多動が目立っていた本児が、当施設に来て安心して職員と関われるようになったことで落ち着きがみられ、言語形成、社会性が伸びたと考えられる。これは小林、村井が「愛着行動によって自らの要求や不安を養育者に伝達しそれを受け止めてもらう事で自らは愛されるにふさわしい存在である事を確信できる」と述べているように、本来持っている生きる力が引き出され成長したと言える。児童施設として、児の発達促進において愛着の形成は重要であることを再認識した。