日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
症例報告
経口摂取不能であった重症心身障害児に奏功した在宅訪問による口腔ケアおよび摂食・嚥下訓練
栗木 みゆき良盛 典夫玄 景華岩城 利充三浦 清邦
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2010 年 35 巻 1 号 p. 163-169

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抄録
在宅での専門的口腔ケアおよび摂食・嚥下訓練を長期間継続した結果、口腔および摂食・嚥下機能が改善した1例を報告する。症例は治療開始時2歳6カ月の女児で、気管切開を受け、栄養はすべて経鼻栄養チューブからの経管栄養であった。口腔内状況は全顎にわたり歯肉炎や歯石沈着、舌苔による強い口臭を認めた。訪問歯科衛生士による専門的口腔ケアを毎月2回実施した。ブラッシング、歯石除去、舌粘膜の清掃、フッ素塗布、摂食・嚥下訓練等の内容であった。口腔内の過敏が軽減し、1年後に少量のゼリーの捕食が可能になり、9歳時では1日1食程度のペースト・ミキサー食の経口摂取が可能になった。本症例では、在宅という本人がリラックスできる環境で専門的口腔ケアと摂食・嚥下訓練を6年以上にわたって継続したことが、摂食・嚥下機能の改善につながったと考えられる。気管切開を受け、経口摂取をしていない重症心身障害児においても、専門的口腔ケアを中心とした摂食・嚥下リハビリテーションを積極的に試みることで、摂食・嚥下機能を改善できる可能性があると思われた。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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