抄録
在宅での専門的口腔ケアおよび摂食・嚥下訓練を長期間継続した結果、口腔および摂食・嚥下機能が改善した1例を報告する。症例は治療開始時2歳6カ月の女児で、気管切開を受け、栄養はすべて経鼻栄養チューブからの経管栄養であった。口腔内状況は全顎にわたり歯肉炎や歯石沈着、舌苔による強い口臭を認めた。訪問歯科衛生士による専門的口腔ケアを毎月2回実施した。ブラッシング、歯石除去、舌粘膜の清掃、フッ素塗布、摂食・嚥下訓練等の内容であった。口腔内の過敏が軽減し、1年後に少量のゼリーの捕食が可能になり、9歳時では1日1食程度のペースト・ミキサー食の経口摂取が可能になった。本症例では、在宅という本人がリラックスできる環境で専門的口腔ケアと摂食・嚥下訓練を6年以上にわたって継続したことが、摂食・嚥下機能の改善につながったと考えられる。気管切開を受け、経口摂取をしていない重症心身障害児においても、専門的口腔ケアを中心とした摂食・嚥下リハビリテーションを積極的に試みることで、摂食・嚥下機能を改善できる可能性があると思われた。