抄録
目的
血中尿酸値は、プリン体からの産生と尿細管での分泌、再吸収によって制御されている。当園入所中症例の血中尿酸値を調査し、低尿酸血症の背景因子、尿細管機能を比較検討した。
方法
入所中の重症児者134名(男73,女61 年齢4~77歳,平均45.7±16.9y 大島1:64,2:27,3:9,4:6,その他:28)を対象に血中尿酸値を評価した。2009年4月~2010年4月までに2~3回血中尿酸値を測定し、1回でも血中尿酸値が2mg/dl以下を示した例を低尿酸血症とし、非低尿酸結症例と背景因子や尿細管機能の比較を行った。比較はχ二乗検定とt検定で用い、有意水準はp<0.05とした。
結果
低尿酸血症19例、非低尿酸血症115例だった。性別(男性割合63.1vs52.5%)、年齢(平均41.1vs46.5歳)、BMI(平均18.6vs18.8)、血中Alb(平均3.9vs4.0g/dl)については有意差はなかった。臥床状態(78.9vs47.5%)、完全経管栄養(47.4vs19.2%)、VPA内服(57.9vs25.8%)については有意差を認めた。低尿酸血症14例と非低尿酸血症24例について近位尿細管機能の比較を行い、FEUA(平均10.8vs4.3%)については有意差があり、尿中NAG(平均6.3vs6.4U/L)、尿中β2MG(平均460.7vs477.2μg/gCre)、FENa(平均0.3vs0.3%)、尿細管リン再吸収率(平均93.5vs96.9%)には有意差を認めなかった。低尿酸血症19例のうち、1例のみFanconi症候群と診断された。低尿酸血症の2例はカルニチン補充を行っていた。
結論
当園入所児では臥床状態や完全経管栄養、バルプロ酸は低尿酸血症の危険因子だった。低尿酸血症群と非定尿酸血症群との近位尿細管機能の比較では、FEUAのみ有意差があった。