日本重症心身障害学会誌
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B34 ラモトリギンの開始時に認められた食欲不振と体重減少
−NST活動を通じての検討−
守屋 宏子大島 圭介西松 美和奥野 毅彦
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2010 年 35 巻 2 号 p. 264

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抄録
はじめに ラモトリギンはここ数年の新薬の中では小児に対する適応もあり、専門医の期待が大きい抗てんかん薬である。我々は、ラモトリギン投与開始後に食欲低下とそれに伴う体重減少をきたした症例で、NSTにて問題を抽出し、対応を検討した事例を経験したので報告する。 症例 42歳女性。重度精神遅延・脳性麻痺(横地分類A3)、難治性てんかん(West症候群後Lennox症候群)、甲状腺機能低下症。34歳で入園後、抗てんかん薬変更にて日中の傾眠傾向の改善とてんかん発作の減少(〜10回/月)を認めた。一方、肥満傾向のため、低カロリー・マンナン食に変更していた。41歳よりラモトリギン投与開始。併用薬はフェニトイン、カルバマゼピン、クロバザム、チラージンS ®。ラモトリギン投与開始8週後、療育介護職よりNST回診の依頼があった。依頼内容はラモトリギン投与開始約1週間後から食欲の低下が始まり、投与前50.2kgであった体重がNST依頼時には46.0kgに減少していた事、食事介助に時間がかかるようになり、摂取量も2/3を切っていた事であった。NST検討会では、薬剤師がラモトリギンには食欲不振の副作用報告のある事を提示。直接介護職員から時間をかければほぼ全量摂食できるのではないかとの提案もあり、ラモトリギンは続行とした。一方、ラモトリギン開始3週前にクロバザムを中止していたが、その頃より不機嫌、てんかん発作が増加していたことも明らかとなり、クロバザムを再開した。併せて摂取カロリーを増量した。その後のNST検討会では、情緒も安定し、食欲の回復と体重が増加傾向に転じた事を確認した。 結果・考察 体重減少はラモトリギン開始・漸増時の食欲不振によるものと考えられた。しかし、ラモトリギンによる食欲不振が一過性であった事と、多職種が関われるNST検討会の場で、患者の日常生活全般での観察を考慮して検討できた事が今回の症例では効果的な対応を得られたと考える。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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