抄録
目的
重症心身障害児の推定エネルギー必要量には、いくつかの計算方法がある。実際には、身体計測値や年齢に加え、麻痺型、呼吸、筋緊張、運動レベルなどの個別性に配慮した設定が望まれる。今回我々は、間接熱量測定により算出された安静時エネルギー消費量(REE)と推定式を用いて算出した基礎エネルギー消費量(BEE)を比較し、重症心身障害児の推定エネルギー必要量について検討した。
対象・方法
神奈川県立こども医療センター重症心身障害児施設に入所中の21名(3歳6カ月〜30歳4カ月、男11名、女10名)についてREE測定を行った。対象群のBMIは9.8〜18.4(平均13.7)、麻痺型は痙直型19名、混合型2名、運動レベルは移動不可18名、寝返り可3名だった。栄養評価として体重身長比(%W/H;実測体重/身長に対する標準体重x100)を用い、検討項目はエネルギー摂取量、BEE、麻痺型、呼吸状態、運動レベルとした。
結果
1.REEとBEEの比較:平均値はREE 606kcal, BEE 732kcalだった。17例(80%)はBEEがREEより高く、REEがBEEより高い4例は、吸引回数が頻回(10回/日以上)な症例だった。REE/BEE値を吸引の有無による群間で比較すると吸引有群で有意に高かった。24時間呼吸心拍モニタリング(SpO2 95%以下の時間割合、心拍120以上の時間割合)とREE/BEEとの相関はなかった。
2.運動レベルを細分化すると投与カロリー/REEが1より大きくなるのは運動が体幹四肢に及ぶ高運動群となる傾向があった。
まとめ
重症心身障害児の栄養管理では総エネルギー設定に際し、より正確なエネルギー消費量の推定式が望まれる。REE/BEE高値の影響因子として、吸引の有無で現わされる呼吸要素が明らかとなった。身体活動レベルの細分化については多くの症例検討が必要である。