抄録
当施設は、重度心身障害者400名、特別養護老人ホーム100名、療護施設100名の施設である。2006年に当園の特別養護老人ホームと療護施設にて合計100名をこえるノロウイルス感染者をだした。本年の口蹄疫の感染の広がりとニュースに流れる人々の苛ついた疲れ切った表情と同じ事が起こり、現場は混乱し、各部署、病棟間の軋轢も多く、利用者が重症化してしまったり、職員にも多数の感染者をだしてしまった。また利用者家族とのトラブルも多く、混乱した中で必要なことが抜けがちであることに思い知らされた。この問題点はノロウイルス感染症への知識不足や感染防御体制の不備だけでなく、感染症発生場所職員の心身の疲弊、物資、人員の確保、現場の状態の把握不足と思われた。言い換えれば、アウトブレイクは感染症だけ見ていてものりきれないとわかった。そこで病院全体での支援システム:感染管理サポートシステムInfection Management Support System(IMSS)を立ち上げた。それには、医師、看護部だけでなく、中材、事務、ケースワーカー、洗濯、検査、栄養課、薬局、が加わった。そのシステムの中で、医師はアウトブレイクの場所のみの担当と他の場所の担当を分け、看護部は当該病棟の人的・物的な不足の把握をし、それの補充の手配を、支援病棟は、日常の業務(病棟日誌や、物品検査の配達・連絡など)の手助けを行った。病棟の外に補充場所を設け、定数を決め中材・事務所はガウン、手袋、紙おむつ等を薬局は薬剤を補充している。検査・栄養科・中材・薬局とはFAXで書類のやりとりを行った。職員の病棟内外での服装も工夫した。これにより感染病棟職員が感染場所から共同の場所への出入りをなるべく少なくすることができ、また、当該病棟職員の肉体的、精神的疲労も少なくなっている。今回このシステムの詳細を各部署にアンケートをとることでえられた利点と問題点とともに報告する。