日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P1013 重症心身障害者の経管栄養回数見直し
−高濃度栄養剤と水先投与法による回数の削減−
黒川 裕紀子吉田 等井草 由実
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2010 年 35 巻 2 号 p. 274

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抄録
はじめに 現在、多くの重症心身障害児(者)施設では一日に5回程度の経管栄養を行っていることが多い。栄養量および水分量の妥当性を検討し、過剰な摂取があれば見直すことで回数削減につながると考えたが、過剰な摂取はなかった。そこで、一日の栄養量や水分量を変えずに経管栄養回数を減らす方法として、高濃度栄養剤の活用と水先投与法に着目した。これらの方法により、安全に重症心身障害者の経管栄養回数を減らすことができるのかを検討した。 対象 経鼻経管栄養の利用者3名 Aさん:60代 女性 ダウン症候群・胃食道逆流 Bさん:30代 女性 脳性麻痺・精神遅滞 Cさん:30代 男性 進行性ミオクローヌスてんかん 期間と方法 2009年7月から2009年11月 1.従来の方法でのデータを基礎データ期として収集する。2.栄養剤の一部を高濃度栄養剤に、経管栄養方法を水先投与法に変更し、回数を4回に減らしたデータを第1期として収集する。3.回数を3回に減らしたデータを第2期として収集する。※各期間で、収集するデータは下記項目とする。・胃内容物残渣(毎日)・胃断面積(期間中3回)・栄養状態および体重、尿比重(期間中1回) 結果 Aさんは、第1期へ移行後胃内容物残渣が増加し、経管栄養内容の見直しを行った。その後、胃食道逆流に伴う嘔吐等なく第2期へ移行した。Bさんは、第2期への移行に際し家族より「一日3回まで減らすことには抵抗がある」との申し入れがあった。一日3回の経管栄養の合間に白湯を追加することで同意が得られ、第2期へ移行できた。Cさんは、回数削減に関連する明らかな影響がなく経過した。 考察 3名共に状態に大きな変化はなく経過し、回数を削減することができた。今回のような症例では、高濃度栄養剤と水先投与法を用いることで、経管栄養回数を減らすことが可能である。 結論 高濃度栄養剤と水先投与法を用いることで、安全に経管栄養回数を減らすことができる。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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