日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P1017 重症心身障害者の弄便の予防に関する事例研究
−下着の改善と排便調整−
松浦 裕子家光 富美子木村 勇喜子渡辺 陽子島崎 智鶴河野 やす子
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 35 巻 2 号 p. 276

詳細
抄録
はじめに 看護上、重症心身障害者の問題行動の中で、排泄に関するケアの問題があげられる。今回、当院に入院中のA氏は、支援学校を卒業後に、弄便回数が急増した。看護ケアを実施し、下着の工夫と改善を繰り返す中で、弄便を予防することが出来たので報告する。 目的 弄便予防に下着の改善を取り入れた看護ケアを明らかにする。 研究対象・方法 1.対象:A氏、20歳代、男性 2.期間:平成20年6月1日〜平成21年12月 31日 3.方法:1>H6〜H21年12月の看護記録を用い、弄便の時期・時間帯、排便状況、家族の面会状況、生活の変化、看護ケアを分析した。2>分析した結果を看護スタッフ間で検討し、患者のアセスメント・既存の看護ケアをもとに、看護ケアの計画を立案し、実施・評価した。 結果 1.排便時間・排便時の表情・姿勢や臭気などを把握し、早めにオムツ交換を実施し弄便を防止できた。日中に排便を調整した結果、弄便が減少した。 2.遊びを取り入れながら気分転換を図り、関心を他に向けることにより、弄便が減少した。 3.年齢や性別・色やデザインなどを考慮した下着を作成した。下着を着用した結果、運動を妨げることなく、A氏らしさを失わず、嫌がることもなかった。弄便は、全く無くなった。 考察・まとめ 1.弄便、即、つなぎ服の着用を考えた時期もあったが、患者らしさを失わない工夫も必要であると認識できた。下着を改善した結果、患者の弄便は無くなった。 2.患者の姿勢・表情を観察する中で、排便のサインを発見し、早めに対応できるようになった。 3.指導室と連携することで、情報交換ができ、患者をコメデイカルで関わる事ができるようになった。 4.私達は、研究を通し、患者の弄便行為が、周囲の者に何かを訴えようとするサインの1つとして、捉えることができるようになった。今後も、患者の欲求を受け止めるために、一定時間は一緒に過ごすようケアを継続していきたい。
著者関連情報
© 2010 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top