日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P1018 動作法を用いた排便コントロールへの取り組み
杉本 さおり松田 博行大豊 道子吉田 さとみ山本 彰子
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2010 年 35 巻 2 号 p. 276

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抄録
はじめに 重症心身障がい児(者)の排便コントロールは、常に困難を呈しており、多くの患者が緩下剤や浣腸を常用している。便秘の要因の一つに筋の緊張異常による腸の蠕動運動の低下がある。そこで、筋の緊張を整えることで自然排便を促すことができないかと考え、リラックス効果のある動作法を取り入れた。動作法の効果で、自然排便が増えたので報告する。用語の定義:動作法は、自閉症児や精神遅滞児、重度・重複障害児などの行動の改善や心理療法に有効とされている。患者とのバランスを保ち介助する事でリラックス効果が得られ、ストレスが解消するなどの心理的効果の期待できるもの 目的 動作法による自然排便の効果を検証する。 研究方法 対象:筋の緊張異常があり、自然排便のほとんどない患者5名 期間:平成21年6月20日から平成21年12月19日 方法:排便状況(浣腸回数・ブリストル便形状スケール)の変化と動作法実施前後の腸蠕動音の変化を比較する。倫理的配慮:対象及び親権者に研究主旨を説明し同意を得た。対象患者が特定されないように配慮した。 結果 5名中1名は、動作法の腰のねじり運動時に不快感を訴え中止とした。他4名のうち2名に変化がみられた。A氏は3カ月の浣腸回数は23回から17回に減り、自然排便は0回から11回に増えた。便の形状は軟便から普通便になった。B氏は3カ月の浣腸回数は19回から6回に減り、自然排便は30回から38回に増えた。便の形状は兎糞状の硬便から普通便に近づいた。動作法実施前後の平均腸蠕動音では、4名とも実施後に回数の増加がみられた。 考察 動作法導入による関わりは、筋緊張の強い患者にとって全身の筋の緊張が軽減され、リラックス効果につながると同時に副交感神経が優位となり、腸の蠕動運動を活発化させ自然排便を促すきっかけになったと考える。 まとめ 動作法によるリラックス効果は、緊張のある重症心身障害児(者)の自然排便促進に活用できる。
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© 2010 日本重症心身障害学会
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