抄録
はじめに
尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルスによる性感染症であり、通常は性的行為で感染する。しかし小児の場合、性的行為がなくても、感染した親との共同生活による感染の報告も見られる。今回重症児病棟で発症が確認され、感染経路は不明であるが集団生活の中で留意すべきと思われ、報告する。
症例
症例1:42歳男性、原因不明の多発性末梢神経障害、大島分類1、経管・経口栄養併用。2年前より原因不明の体重減少あり麻痺性イレウス反復もあり、栄養状態不良。血清亜鉛48μg/dl。肛門部の鶏冠状隆起と皮膚硬結に気づかれ、生検で上皮細胞の乳頭状変化と細胞の核周囲に空胞化が見られ、尖圭コンジローマと診断。
症例2:47歳男性、全前脳胞症、大島分類1、経口摂取。右腎珊瑚状結石あり6年前より腎膿瘍化し慢性炎症持続。血清亜鉛52μg/dl。肛門部ヒダ状隆起を認め、生検にて診断。
症例3:24歳男性、ペルオキシソーム病、大島分類1、経管栄養。病状進行し7年前より気管切開・人工呼吸器管理中。血清亜鉛56μg/dl。肛門部疣状隆起を認め、生検にて診断。
いずれもイミキモドクリームを週3回塗布し治療中である。
考察
発症した症例のいずれも、全身状態不良で低亜鉛血症も伴った。初期病変は、本疾患を念頭におかなければ痔として見過ごされる可能性があった。感染経路は不明だが、同じ病棟で複数発症したことは水平感染も疑われるため、陰部のケア方法については見直す必要がある。常時オムツ使用し皮膚のバリア機能が破綻しやすい状態で、かつ合併症等で全身状態不良の場合は、性感染症であっても発症する場合があり念頭におく必要がある。