日本重症心身障害学会誌
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一般演題
A25 骨塩量低下を呈する重症児への日光浴促進の有用性
金村 英秋畠山 和男相原 正男
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2011 年 36 巻 2 号 p. 280

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抄録
はじめに 重症心身障害児(以下、重症児)では、運動低下や慢性の栄養障害により骨塩量低下を来たしやすい。しかし運動や摂食の促しは困難なことが少なくない。一方、重症児では外出の機会が少なく日照時間が不足し、骨形成に障害を来たすとされている。われわれは日光浴促進を行わなかった7歳重症児では骨塩量の1年間での明らかな変化を認めないことを以前確認した。今回、骨塩量低下を呈する重症児に対して日光浴促進による骨塩量への影響について検討した。 症例 大島分類1の在宅重症児5例(6〜8歳、男児3例、女児2例)。全例抗てんかん薬を服用中。また摂食困難のため3例で高カロリー栄養食を投与中である。 方法 Digital image processing(DIP)法により中手骨骨塩量の測定を行った。さらに最近1カ月間の晴天時外出時間を測定し、1日の平均日照時間を算出した。その上で家族に日光浴の重要性を説明し、外出機会の増加を促した。両親に同意を得た上で、その後3カ月間毎の日光浴時間を算出し、DIP法による骨密度を再測定し、1年間における変化を検討した。なお、全例で抗てんかん薬・食事内容の変更は行っておらず、全身状態に明らかな変化を認めていない。 結果 日光浴導入前の骨塩量は平均0.52(0.42〜0.59)であった。また1日の日光浴時間は平均0.48時間(0.28〜0.76)であった。導入後日光浴時間は平均1.6時間(0.9〜3.0)まで増大し、骨塩量の平均は3カ月後0.578(0.5〜0.62)、6カ月後0.652、9カ月後0.702、12カ月後0.736(0.69〜0.76)まで増加した。 考察 骨塩量の低下は様々な要因が関与しているものの、その改善に日光浴の促進が有効であることが示された。骨折予防は介護上重要な課題であるが、その対応として運動や栄養、抗てんかん薬の調整等は困難な場合が少なくない。日光浴は外出機会を増やすなどの対応で促進可能であることより、重症児への骨折予防に有効かつ導入しやすい対処法と考えられる。
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© 2011 日本重症心身障害学会
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