抄録
はじめに
胃ろうによる経管栄養法はメリットも多いが、ダンピング症候群がしばしば問題になる。本症例は、経腸栄養剤注入30分後の血糖値が220mg/dl代、2時間後40〜60mg/dl代になり後期ダンピングと診断された。主治医と連携し食物を胃に停滞させる目的で半固形化経腸栄養剤の注入を開始したところ、食後高血糖はなくなりダンピング症状は改善したが、難治性下痢にて経腸栄養剤は中止せざるを得ず、ペースト食のシリンジ注入を行い経過良好であった。しかしこの食物をシリンジで手押し注入する方法は、学校や多くの施設では前例なく対応困難となる場面が多いため、今回イルリガードルで滴下可能な流動食を開発し、ダンピングや下痢に対しても良好な結果が得られたので報告する。
方法
市販かゆ酵素(でんぷん分解酵素の粉)と全粥をミキサーにかけ、全粥をサラサラの液状にする。その液状の粥と副食をミキサーにかけ、こし器を通す。これをイルリガードルに入れ、クレンメの手動調節で250mlを1時間かけて胃ろうから滴下し、その落ち方を観察した。
また、30分毎の血糖値(BSmg/dl)測定、心拍(HR回/分)と酸素飽和度(SpO2%)をパルスオキシメータでモニタリング。児の様子を医師、看護師、栄養士、調理師、OT、家族とともに観察した。
結果
食前BS65、30分後BS93、120分後BS82。一時HRは130代まで上昇したが、児の様子に特に変化はなく許容範囲と判断した。滴下状況は食物成分の沈殿に対し撹拌やクレンメ調節は必要であるが全量滴下可能であった。
まとめ
今回胃ろうから自然食の滴下に成功した。また、本症例を通して家族や友達と同じ自然食を摂れる経験をし、これまでの胃ろうからの食事について考え直す機会となった。重症心身障害児(者)は、障害が重くなるほど、生命維持のケアに懸命になり食事の楽しさを忘れがちだが、各部門スタッフと連携を図り、食事の喜びも経験できるよう支援していきたい。