抄録
目的
短期入所を利用しながら在宅で暮らしている方の、親亡き後の暮らしのあり方が課題となっており、在宅生活が難しくなると施設入所をせざるを得ない現状がある。今回、入所施設の職員およびNPO法人のメンバーとして関わった保護者と支援者による新たな暮らしの場の創設にむけた取り組みを報告したい。
特定非営利活動法人ぴのきおの取り組み
鳥取県米子市にある特定非営利活動法人ぴのきおは、共同住居をめざそうという志を抱いて、住居とする借家を探し、保護者と支援者の出資で中古物件を購入した。その後、夜間介助の必要性から居宅介護事業所「ヘルパーステーションふぁいと」を開設した。現在は、共同住居からケアホームを目指した取り組みをしている。
課題
1)ケアホームとする場合、介護スタッフを必要とする重症心身障がい者の医療的ケアの人員(支援員・看護師)の確保の問題がある。
2)重度の身体障がい者用に改修するには、範囲が広く費用が膨大になってしまう。
3)最低限度の重度訪問介護の時間数をどう確保するか。
4)入居者の地域貢献として、多機能型の共生ホーム(地域交流や障がい児者預かり、幼児預かり、親の会の拠点)として活用することを希望していたが、ケアホームではそれらの活動が認められない。
考察および結論
米子市に関しては、重症心身障がい児者の場合、在宅か施設という2つの選択肢しかなく、現状では在宅生活が難しくなれば施設しか選択できない。共同住居やケアホームといった多様な暮らし方を選べる地域をめざした取り組みが必要不可欠である。
現在、特定非営利活動法人ぴのきおでは、改修工事費用の課題については、ケアホームの改修にむけた補助事業が決定し、ミスト式の入浴設備の導入等一定の目途がついた。ケアホームにすることで多機能活動は行えないが、今後、必要な介護の支給量の確保に見通しがつけば、ケアホームとしての事業の実施がみこまれている。