抄録
はじめに
2008年に、脳内出血を起こした30代前半の妊婦が受入れを断られ死亡したという事件が問題となり、その原因として、NICUの病床が満床だったとする調査を厚労省が公表した。今後、在宅への流れがさらに進んでいくと思われるが、現状では、その家族を支えるシステムが不十分なために、重い負担を家族に強いている。このままではその問題が置き去りにされたままである。われわれは、そのために多摩療育ネットワークを設立した。その取り組みを紹介する。
経緯および活動
2008年に多摩療育ネットワークを設置した。
設立趣旨:1.参加施設が、療育問題を検討し情報を共有する。会員はメーリングリストに登録され、症例検討、相談、紹介などを行う。2.参加施設の役割分担を明確にする。小児医療側や療育施設の医療資源を有効に活用する。3.在宅医療に向け、かかりつけ医制度の確立やそのための診療報酬や制度の改善、訪問看護制度の充実などによる親への介護支援策を推進する。4.中核病院小児科の連絡会への参加を推進する。5.長期的には行政による介護施設の大幅な増設と療育施設と介護施設の連携を推進する。2011年4月現在、115名の医師が登録し活動している。
活動内容は:1.メーリングリストによる症例相談・情報提供。2.定期的に会議を行い、情報交換を行う。3.多摩地区の医師、看護師、教員、介護福祉士、保育師などを対象として、医療的ケア講演会を開催。4.今後に向けて、重症児療育手帳の作成、低出生体重児の地域移行クリニカルパスの作成などを行っている。
結語
家族は、子どもが障害をもったことについて、自分を責めたり、まわりから責められていることが多い。子どもを授かるという幸せに胸膨らませていた状態から、奈落の底に落とされた家族。そんな家族が、「この子が生まれてよかった」と思えるように寄り添っていくのが、われわれの使命であり、そのための連携を進めていきたい。