抄録
序論
変化の少ない重症心身障害児(者)施設に勤務する看護師(以下、看護師)の、主体的な継続学習(以下、学習)は、難しいという経験的実感があった。
そこで今回、学習の意識と、主体的行動(以下、行動)の一端を明らかにし、今後の学習に対する方向性を見いだすことを目的とした。
対象と方法
2010年2月から2011年3月にかけて、看護師31人を対象に、4回の質問紙で学習に対する意識と現状を調査し、12回のペーパーテスト(以下、テスト)を用いて実際の行動を検証した。対象者には、研究の趣旨説明を行い協力への同意を得た。
結果・考察
回答者の個人属性は、年齢23歳から58歳で、その中央値は46歳。勤続年数は、0.5年から26年で、その中央値は9年であった。学習の必要性は97%の看護師が認識しており、学習したいと思っているがしていない84%が現状であった。さらに、自信を持って働くために何が必要かにおいては、83%が知識・技術と答え、学習に対して高い価値を持っていると言えた。また、学習をしていない理由は、業務上支障がない55%、時間がない45%、やる気がない39%と続いた。実際テストの参加率は94%と高く、テスト後の84%が学習の必要性を感じたと答えた。しかし、テスト前からテスト後6カ月にかけて、大半の看護師の行動に変化はなかった。
この結果から、学習の必要性は十分に感じ、意識、意欲も高く、与えられた学習へも積極的に参加することが明らかになった。しかし、学習意欲があることや、与えられた学習では、元々の学習していない理由もあり、個人の責任においての学習は難しいと示唆された。そのため、個人で取り組むことの難しい学習には、組織的な働きかけが不可欠であると言える。そしてその前提に、学習することが目的ではなく、学習するということは、看護師とその組織の理念、目的に向かうものであることを、認識することが重要と考える。