抄録
横浜市には約950人の重症心身障害児(者)がおり、そのうちの約830人が在宅生活を送っている。短期入所のニーズが多い中で、短期入所用のベッドは20床程しかなく、年間での短期入所の実績は914件のみである。在宅重症心身障害児(者)1人あたり、年1回位しか短期入所できないのが現状である。緊急時など市外の施設を利用せざるをえないケースもあるが、その裏に隠れた潜在的ニーズは、大きなものだと考える。そこで、今回私たちはこの潜在的ニーズがどのくらいあるのかアンケート調査をもとに検討した。
当施設日中一時支援サービス利用中の保護者13名に対し平成22年10月にアンケート調査を行った。アンケートの調査期間は平成21年10月から平成22年9月までとし、この期間に短期入所を利用したかった事例(以下、事例)をすべて挙げ、それぞれにつき転帰の詳細を記してもらった。
事例は年間のべ31回あり、1人当たり1〜10回で、このうち10回の1人を除いては1〜3回で0回は1人もいなかった。10回の1人は双子の兄弟ともに在宅酸素を施行中の重症児であり、特に事例の回数が多かったものと思われる。転帰は短期入所できた事例1回のみ、児童相談所に申し込んだが短期入所できなかった事例が8回であった。また、主治医に頼んで入院対応をしてもらった事例が5回、主治医に頼んでも入院対応できなかった事例が2回であった。15回は最初から諦めて児童相談所にも主治医にも頼まなかった。
今回の検討により、短期入所できた陰にはその何倍もの潜在的ニーズが隠れていること、短期入所以外に主治医に頼んで病院での入院対応をしてもらったケースが少なくないこと、緊急の要件でも最初から諦めて、どこにも依頼をしていないケースが非常に多いことが分かった。