日本重症心身障害学会誌
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教育講演2
重症心身障害における気道病変の診断と治療
−内視鏡を中心とした管理−
長谷川 久弥
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2012 年 37 巻 2 号 p. 239

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抄録
重症心身障害児者は様々な気道病変を合併する。これらの気道病変は症状からすると喘息との鑑別が困難なこともある。薬剤不応性の喘鳴や通年性の喘鳴を認める場合には気道病変の存在を疑い、積極的に検索をすすめる必要がある。 検索のすすめ方 気道病変の存在が疑われた場合には、画像検査を中心とした検索をすすめる。頸部側面X線検査、頸部・胸部CT検査は気道病変の検索として多くの情報を与えてくれる。胸部の造影CT検査は気管腕頭動脈瘻の危険性の予知や血管による気道の圧迫状態の把握に有用である。直接的な診断としては喉頭・気管・気管支鏡検査が最も有用である。診断だけでなく、気道病変に対する治療を行うことも可能である。また、内視鏡下における生理食塩水を用いた嚥下試験は、嚥下障害の疑われる患者さんに比較的安全に行うことができる検査である。 代表的な疾患 ・舌根沈下 長期臥床を行っている場合、重力の影響を受けて舌根部が後方に移動し、上気道閉塞を来す場合がある。姿勢の工夫などで症状が軽減する場合もあるが、長期にわたって舌根沈下の状態が続くと、扁平喉頭などの喉頭の変形を来し、呼吸症状だけでなく誤嚥などもおこしやすくなる。 ・気管・気管支軟化症 血管の圧迫や胸郭の変形、慢性的な努力呼吸などに伴い、気管・気管支軟化症を合併する場合がある。慢性的な喘鳴を認め、薬剤不応性で、重症例ではdying spellといわれる心肺停止発作を起こす場合がある。CPAPなどによる気道保持が有用である。 ・気管・気管支肉芽 長期気管挿管に伴い、挿管チューブや気管吸引の刺激などが原因で起こるのが気管・気管支肉芽である。小さいものでは無症状であるが、大きくなると出血を来したり、気道を閉塞し換気障害の原因となる。長さを規定した制限吸引を行ったり、局所への薬剤投与などで軽減する場合が多いが、重症例ではレーザーによる肉芽焼灼術が必要となる場合もある。 ・気管腕頭動脈瘻 胸郭が前後に狭い形に変形すると、気管前面を走行する腕頭動脈に気管が圧迫される場合がある。気管支鏡で観察すると、気管前壁側からの拍動性圧迫を確認できる。気管狭窄の原因となるだけでなく、気管切開チューブを使用している例では、気管側に腕頭動脈が穿破する気管腕頭動脈瘻を形成する危険性がある。 まとめ 気道病変は疑って検索をすすめなければ診断、治療に到達しない。薬剤不応性の喘鳴や通年性の喘鳴を認め、通常の喘息として疑問が持たれる場合や難治性の無気肺、気道からの出血などを認める場合には気道病変の存在を疑い、積極的に検索をすすめる必要があるものと思われる。 略歴 1983年 和歌山県立医科大学卒業、 同 年 東京女子医大第二病院(現東医療センター)小児科入局、1985年 松戸市立病院新生児科勤務、1990年 松戸市立病院新生児科医長、1995年 医学博士、2007年 松戸市立病院新生児科副部長、2009年 東京女子医大東医療センター周産期新生児診療部部長、2010年 東京女子医科大学東医療センター新生児科部長・臨床教授 現在に至る
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