抄録
背景
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は脳障害や長期臥床状態から脊椎変形を合併しやすい。脊椎変形は胃の形態、ひいては胃排出能に影響を及ぼすが、重症児を対象とした経管栄養時の姿位について胃排出能からみた検討は少ない。
対象と方法
当病棟に入院中の経鼻胃管・胃瘻による経管栄養を受けている重症児のうち研究参加同意の得られた11例を対象とし、アセトアミノフェン法による胃排出能検査を仰臥位・右側臥位・左側臥位、それぞれの姿位で施行した。さらに脊椎レントゲン、上部消化管造影を施行し、患者背景、臨床症状、検査結果のデータを収集し、解析した。
結果
対象患者は超重症児(者)8例、準超重症児(者)3例、平均年齢は37.3歳、男女比7:4であった。基礎疾患は脳性麻痺など多岐に渡った。脊椎変形は右凸側彎2例、左凸側彎4例、double curveの側彎2例、変形なし3例であった。胃食道逆流(gastroesophageal reflux:GER)を6例54.5%に認め、短軸捻転の合併は3例27.3%、長軸捻転の合併は3例27.3%にみられた。double curveの側彎2例はいずれも短軸ないし長軸捻転を認めた。胃排出能は仰臥位・左側臥位に比べ、有意に右側臥位が悪かった(平均血中アセトアミノフェンピーク時間;仰臥位38.3±18.5分、左側臥位36.6±16.9分、右側臥位63.3±16.3分)。脊椎変形、胃の形態は胃排出能と明らかな関連を認めなかった。
考察
脊椎変形に関わらず胃排出能は右側臥位が他の姿位と比べ有意に悪かった。GERは一般的に右側臥位で悪化することからも経管栄養の姿位として右側臥位以外の体位を中心に検討すべきと考えられた。