抄録
重症心身障害者通所施設(以下、通所施設)では、医療的ニーズの高い重症心身障害者(以下、重症者)への質の高いサービスが求められている。本研究は、医療的ニーズの高い重症者(以下、利用者)と看護師との間でどのようにケアが形成されているのかを明らかにすることを目的とした。
研究方法
データ収集は参加観察法と面接法を用いた。研究フィールドは関東地方の1通所施設であり、研究参加者は看護師8名と保育士・指導員(以下、福祉職員)9名で、障害児施設勤務経験が10年以上あった。利用者は8名(20−30歳台、超重症者5名、準超重症者3名)とその保護者であった。データ収集は週1−2回のフィールドワークを約2年実施し、データ分析はEmerson, Fretz & Shaw (1995/1998)の方法を参考にした。
倫理的配慮
研究の趣旨と方法、参加の自由に関する説明を、利用者、保護者、看護師、福祉職員に紙面と口頭で行い承諾を得た。利用者には通所施設で用いている方法で看護師または福祉職員とともに説明し、自宅で保護者から参加の意思を確認してもらい承諾書に記入を依頼した。参与観察や面接では、研究参加者の健康状態や介護状況、業務の負担にならない方法を相談した。本研究は研究施設(NO.0044)と日本赤十字看護大学の研究倫理審査委員会(NO.2011−5)承認を得て実施した。
結果および考察
通所施設の看護師は、利用者や福祉職員との交流の中で利用者の願いや「その人らしさ」を把握し、その人らしくあるようにとケアを行っていた。しかし医療的ケアが濃厚な利用者は自宅でのケアが難しいため体調を崩しやすく活動も儘ならないこともある。そこで看護師は福祉職員とともに家族が行う健康管理を補完し、利用者に関わる人々の知識や経験を統合して「その人流」のケアを形成していた。本研究は、日本赤十字看護大学大学院に提出した博士論文の一部である。