抄録
Xanthomonas arboricola pv. pruni を病原菌とするモモせん孔細菌病は,葉,枝,果実に病斑を生じるモモの重要病害であり,多雨や強風によって多発する.発生すると薬剤散布などで症状を抑えることが難しいため,抵抗性品種の育成が課題となっているが,日本ではせん孔細菌病抵抗性の育種は進められていない.そこで,抵抗性育種に利用できる素材を探索するために,菌液の新梢への複針付傷接種に適した条件を検討し,モモ 69 品種・系統のせん孔細菌病に対する抵抗性の強さを複針付傷接種法によって評価した.接種の条件について検討した結果,接種の時期は 6 月で菌液の濃度は 108 cfu·mL−1 が適していると考えられた.調査した 69 品種・系統の中にせん孔細菌病に対して免疫性を示す品種は見られなかったが,抵抗性の程度には品種間で差異があり,‘Chimarrita’,‘錦’,‘もちづき’,‘つきかがみ’は比較的抵抗性が強く,抵抗性育種の素材として利用できる可能性が示された.