日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
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一般演題
P-2-C-22 眼鏡装用に取り組んだ重症心身障害児1事例に対する機能的近赤外分光法(fNIRS)計測
平野 大輔谷口 敬道恩田 幸子皆川 千尋下泉 秀夫靱負 正雄新井田 孝裕
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2012 年 37 巻 2 号 p. 336

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抄録
緒言 私たちの施設では入所児(者)全員を対象に作業療法士や視能訓練士、眼科医、小児科医など多職種による視機能評価に取り組んでいる。機能的近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy; fNIRS)は、非侵襲的に大脳皮質の神経活動に伴う脳血流変化を計測することができる技術であり、意思表示や言語による応答が難しい重症心身障害児(者)にとって有益な評価手段の一つである。今回、眼鏡装用を療育に取り入れたことにより生活上の変化が見られた1事例について、fNIRS計測を試みたので報告する。 方法 対象は、急性脳症後遺症による四肢麻痺、知的障害、てんかんと診断された13歳男児であり(大島分類5、横地分類A4)、視機能評価に基づき約1年4カ月前より近視矯正、1年前より近視・乱視矯正用の眼鏡を学校場面や作業療法時などの時間に装用していた。fNIRS計測には光トポグラフィ装置 ETG−4000®(日立メディコ)を用い、眼鏡装用時と裸眼時におけるアニメ動画が目前で流れているときの後頭葉領域の脳血流変化の様相について比較した。 結果 動画が流れると、映像を注視し頸部や上肢の動きが減り、fNIRSデータを得ることが可能であった。特に、眼鏡装用時は裸眼時に比し体動が少なく映像の注視時間が長くなる傾向を示した。後頭葉領域の脳血流変化においては、眼鏡装用の有無により異なる様相を示した。 考察 本結果は、眼鏡装用時と裸眼時における行動上の違いが、脳血流変化の様相からも確認できることを示すものであった。本事例は継続的な眼鏡装用により映像の注視時間が長くなり体動が減ったことによって、fNIRS計測を行うことができたと推測される。重症心身障害児(者)に対するfNIRSの使用は、療育者の観察結果を裏づけ、療育方針や介入手段を検討する際に役立つと考えられる。 謝辞 本報告にあたり、独立行政法人 日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B) 課題番号22330260の助成を受けた。
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© 2012 日本重症心身障害学会
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