日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
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P-2-C-26 筋緊張の強い重症心身障害者への音楽療法を用いた緊張緩和への検証
馬場 奈津子桑原 えりか小出 初恵
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2012 年 37 巻 2 号 p. 338

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抄録

目的 過度な筋緊張がみられ日常生活の一部に支障を来している患者に対して音楽療法を取り入れることで筋緊張緩和に効果があるか検証した。 方法 筋緊張が強いと思われる患者に対し筋緊張の調査を実施。その後、筋緊張の継続時間が長かった患者1名(特に経管栄養実施時)に対して、リラックス効果があるといわれているモーツァルトの曲を使用し音楽療法を実施。本研究対象者に合わせた筋緊張の指標(心拍数100回/分以上・背部の反り返り・左関節屈曲困難)をもとに回数・持続時間を観察する。その後、一番筋緊張緩和が見られた「きらきら星による12変奏曲ハ長調K、265より」(きらきら星)で同様に観察する。それぞれ2週間実施し、筋緊張の回数・長さ・心拍数の平均値を比較する。 結果 どの看護ケア場面でも筋緊張はあった。心拍の平均104回/分が音楽療法時では95回/分、きらきら星では89回/分であった。筋緊張時間平均64分が音楽療法時では30分、きらきら星では9分であった。緊張の回数は音楽療法時では1.9回、きらきら星では3.2回と平均回数が多い。しかし、緊張の最長継続時間平均64分が音楽療法では25分、きらきら星では4.3分ときらきら星のほうが短い。 考察 音楽療法を実施することで筋緊張が完全に緩和することはなかった。しかし、心拍数の減少や筋緊張時間の減少はリラックス状態に近づいたことを示し筋緊張緩和につながったと考えられる。さらにきらきら星を選曲することで、筋緊張の回数は増えたが、筋緊張継続時間は減少している。このことから、きらきら星は過去の生活の中で聞き馴れた音楽に近かったと考えられ快反応を得ることができ筋緊張緩和に有効であったと考えられる。モーツァルトだけでなく、過去の生活背景から選曲していくことが効果的であるため、患者個々にあった音楽を選択する必要がある。

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© 2012 日本重症心身障害学会
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