日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-2-C-27 芸術療法を取り入れた個別活動を試みて
井上 栄子
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2012 年 37 巻 2 号 p. 339

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抄録
はじめに 在宅重症心身障害児者の生活は、単調になりがちである。重症心身障害児(者)通園施設は、家庭生活では体験機会の少ない活動や、個々のニーズに合った療育活動の提供を目指している。今回、A氏に対し、芸術療法を取り入れた新たな活動を行った結果、様々な面での変化が見られたので報告する。 目的 (1)本人の能力、興味に合わせた活動を行い、日常生活への意欲を高める。 (2)自信を持たせ、活動の範囲を広げる。 対象 30代女性 重度精神運動発達遅滞 心不全 呼吸不全、大島分類:6、日常生活:24時間持続酸素使用中、車椅子や座位での活動が主で、移乗時SpO2変動あり。コミュニケーション:日常会話は理解できるが、計算、読み書きは困難。性格:消極的で、内向的。集団経験の未熟さから、思い通りにならないとかんしゃくを起こす。 方法 昼食後の休息時間内30分を使用し、電子ピアノや楽器を使った音楽活動や季節の作品、貼り絵、絵手紙などの制作活動、絵画などを行う。 結果 電子ピアノは音を鳴らすことから始め、保育士と一緒に楽譜を作り、好きな曲を弾けるという喜びと興味を示し、一人で何度も練習するなど意欲的に取り組む姿が見られた。楽しい雰囲気の中で、歌い、笑い、発声することで、心肺機能の維持、安定となり、動きの制限、声が小さく思いがすぐに伝わらなかったことへのストレスの発散にもつながった。制作作品を展示し、褒められることで次の作品への意欲を高めることができた。自信とともに、自然に周りへの配慮もできるようになり、順番を待つことや、優しい声かけが聞かれるようになった。 考察 芸術療法は、人のもっている視覚・聴覚・触覚・嗅覚等の感覚を使って構成されており、活動として取り組むことで、心身の活性化につながるということを再確認することができた。この結果をもとに、単調な生活になりがちな通園利用者が、豊かな生活を送れるような療育活動を提供していきたいと思う。
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© 2012 日本重症心身障害学会
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