日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
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O-1-B-06 睡眠障害のある重症心身障害者Aさんへのタッチングによる援助を試みて
山田 香藤井 克味関根 努
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2013 年 38 巻 2 号 p. 261

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抄録
はじめに Aさんは睡眠障害があり、独歩や発声を伴いながら顔を叩き続けることもあるため、必要に応じてミトンを着用することがある。リラクゼーション、安眠、苦痛緩和に効果があると言われているタッチングを行うことで、夜間の睡眠時間を確保できないかと考えた。タッチングの一つであるタクティールケアは認知症患者の精神安定や苦痛緩和に効果があるという報告はあるが、重症心身障害者を対象とした例はない。そこで、本研究ではAさんに対してタクティールケアを参考にしたタッチングが有効であるか検証したので報告する。 目的 睡眠障害のあるAさんにタッチングを行うことで、問題となる行動(独歩、発声を伴う顔叩き)が治まり、夜間安定した睡眠時間が確保できる。 対象 Aさん 50歳代男性 診断名:新生児仮死後遺症疑い、精神遅滞、運動退行、てんかん 倫理的配慮:本研究は倫理委員会で承認を得た後、対象者の家族に書面で研究の趣旨を説明し、書面による同意を得て実施した。 結果 タッチング実施前後の睡眠時間の有意差はなかった。終日のミトン着用時間は有意に減少した。また、夜間帯でのミトン着用時間は有意に減少した。独歩回数は、夜間帯において有意に減少した。タッチングにより発声が小さくなる、消失する、閉眼する、筋緊張が緩和するなどの様子がみられた。 考察 タッチングを実施した結果、睡眠時間に顕著な変化はなかったことから、睡眠導入としては有効ではなかった。しかし、ミトン着用時間の減少、頬叩きや激しい体動を軽減することができた。また、夜間の独歩回数の減少については、夜間の活動性が低下し、心身の安息、休息時間の増加につながったと考える。 結論 タッチングは安定した睡眠時間の確保には至らなかったが、苦痛や緊張の緩和、リラクゼーションに対する効果が示唆された。特別な手技もいらず、簡便にできるタッチングは、日々の療育に取り入れやすい。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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