抄録
はじめに
重症心身障がい児施設に入所している児は、家族間の絆が希薄になりやすい。本施設では、入所後も家族関係を維持する目的の一つとして院内外泊を実施している。入所後14年目に初めて院内外泊を施行した父子家庭の父親が児と過ごす際、時間を持て余すような様子がみられた。児にしてあげたいことはないか尋ねると「何かしたいが、何をすればいいかわからない」という発言があった。児との過ごし方をアプローチしたところ、父親に積極的に関わろうとする姿勢の変化がみられたので報告する。
対象と方法
17歳女児、脳性麻痺・重度精神発達遅滞・気管切開・夜間呼吸器装着・超重症児スコア29点
1期:2カ月間、余暇時間に約6種類のふれあい活動(以下活動とする)実施時のバイタルと反応を評価。
2期:1期でリラックスした活動を3種類選択し、院内外泊時に父親に活動を実施してもらい、記述式アンケートで父親の満足度を調査した。
結果
リラックスできた活動は、歌、本読み、ハンドマッサージだった。活動を導入した1回目の院内外泊では、3つの活動をすべてやろうという発言があり、積極的に関わる姿勢がみられた。2回目の院内外泊では、父親は提案した活動以外に、児の傍らでお互いがくつろいで過ごせる独自の方法を見出せた。アンケートの結果、院内外泊に対して、満足しているという気持ちに変化はなかったが、児に関わる回数は増えたと感じていた。
考察
長期間離れて生活している父子家庭の場合、関わりかたがわからないために、院内外泊時に時間を持て余していたと考えられる。スタッフが児の好む活動を把握したうえで父親に提案し、実施してもらうことが、ふれあいのきっかけとなり、より深く親子が関わり充実した時間を過ごせた。その結果父親は、児がリラックスしている様子を目の当たりに体感したことで絆が深まり、さらに自分なりのふれあい方法を見出すことができた。