日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-E-13 アトピー性皮膚炎のある重症心身障害者に対する環境整備の取り組み
大川 美香
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 38 巻 2 号 p. 319

詳細
抄録
はじめに アトピー性皮膚炎(以下、AD)のある重症心身障害児者にとって、掻痒感や皮膚の症状は不快である。今回環境整備の取り組みにより皮膚症状が軽減したので報告する。 研究目的 ADのある重症心身障害児者に対する環境整備の取り組みについて検討する。 研究方法 1.期間:2012年6月〜9月 2.対象:30代男性。脳性麻痺、大島分類1、AD(特異的IgE抗体価(ダニ)クラス6(2011年12月))皮膚の発赤や掻痒感が著明で増悪・寛解を繰り返していた。皮膚を掻くため、ミトンを装着している。 3.方法:環境整備:週2回のシーツ交換、ベッド周囲の清拭、週1回以上のベッド・マット・枕の天日干し、毎日のマット・枕の掃除機吸引 流涎対策:適宜清拭・ミトン交換、皮膚症状の観察・発赤の原因分析:皮膚フローシート作成、週1回の撮影、特異的IgE抗体価 検査値の比較 倫理的配慮 研究の主旨とプライバシーの保護について家族に文書で説明し同意を得た。 結果 皮膚症状は取り組み開始前、発赤と落屑、湿潤があり軟膏塗布を行っていたが、取り組み後、皮膚の発赤、落屑、湿潤等皮膚症状が軽減した。軟膏塗布回数は昨年と比べ月平均8〜10回から3〜5回に減少した。特異的IgE抗体価は前クラス6から後クラス6と変化は認めなかった。 考察 今回の環境整備の取り組みは皮膚症状の軽減につながったと考える。皮膚症状の軽減とIgEの低下は必ずしも一致しないが、今回検査値に変化はなかった。ADの皮膚の特徴としてバリア機能の低下があり弱い刺激であってもダニの他、流涎や摩擦による発赤等様々な要因が考えられる。皮膚症状悪化の要因を考え対処していくことで最良の皮膚状態を保ち、安楽な療養生活を提供できると考える。 結論 1.ダニアレルゲン軽減に向けた環境整備は皮膚症状の軽減につながった。 2.皮膚症状の改善を図り安楽な生活を送って頂くには包括的な援助が必要である。
著者関連情報
© 2013 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top