日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-F3-03 IT支援を行っている対象者の上肢運動機能について
小玉 武志高橋 奈津美佐藤 匠三谷 紘世中村 裕二津川 敏
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 38 巻 2 号 p. 343

詳細
抄録

はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の多くは、手指、手関節など末梢にも重度な変形を呈しているものも多く、ADL動作や上肢活動に困難を抱えた状態にある。上肢機能の障害は、感覚器としての手の役割が阻害され、認知発達への影響も少なくない。作業療法士は、適切な作業分析により上肢を能動的かつ機能的に活動へ参加させることができ、様々な主体的体験を提供することができる。特にIT支援が充実している昨今においては、発達段階が低い対象者に対しても、能動的な活動の提供が可能となってきた。そこで、当施設において作業療法士によるIT支援を実施している対象者の上肢運動機能を明らかにし、今後の課題について検討を行ったので報告する。 方法 対象は当施設に入所中のうち、Bimanual Fine Motor Functionにおいて4もしく5レベルに該当する重症児(者)で、上肢機能に介入を行っている17名とした。そのうちITを用いた支援を行っているものに対して、遠城式乳幼児分析的発達検査(以下、遠城寺式発達検査)の手の運動項目、感覚運動発達アセスメント(以下、MEPA-2)の操作機能の項目の評価を実施した。 結果と考察 IT支援を行っているものは全体のうち11名であった。各評価において、自ら物を扱う9〜12カ月に該当する対象者はMEPA-2、遠城寺式発達検査ともに1名であった。3〜9カ月に該当するものはMEPA-2では5名、遠城式発達検査では4名であった。上肢の機能的な使用が困難である0〜3カ月に該当するものがMEPA-2では5名、遠城式発達検査では6名であった。このように、各発達評価により、運動発達が低い対象者に対してIT支援を多く提供している現状が明らかになった。これらの対象者の多くは、認知発達においても低い傾向が認められている。そのため、操作性の便利なIT機器を生活場面に浸透させ、発達全般を促していくための工夫が今後必要であると考えられる。

著者関連情報
© 2013 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top