日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-A06 在宅重症心身障害児の家族エンパワメント
−父親が担う役割−
藤岡 寛涌水 理恵佐藤 奈保西垣 佳織沼口 知恵子岸野 美由紀小沢 浩岩崎 信明
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 39 巻 2 号 p. 225

詳細
抄録
背景 様々な困難や苦悩を乗り越えて、家族自身の生活をコントロールし、家族員間あるいは専門職者と協働する力−家族エンパワメントが、在宅重症児の家族支援の重要な指標である。家族の中でも、児の養育に主に関わるのは母親であることが多い。しかし、家族エンパワメントは、母親だけでなく、家族を構成するすべてのメンバーにより培われていくものである。本研究では、家族の中でも特に父親に注目し、家族エンパワメントにおける父親の役割を明らかにすることを目的とする。 方法 在宅で重症児を養育している父親を対象に、半構造化面接を個別で行った。面接では、インタビューガイドに沿って、児や家族の状況・児のケアで困難に感じること・困難なことへの対処を尋ねた。面接内容は承諾を得て録音し、逐語化した。家族エンパワメントにおける父親の役割に注目し、内容ごとにカテゴリー化した。本研究実施にあたり、事前に各研究機関の倫理委員会から承認を得た。 結果 父親18名に半構造化面接を実施した。父親の年齢は35歳〜61歳、面接時間は28分〜96分であった。(1)日常ケアにおける母親との役割分担:仕事を終えて帰宅後あるいは休日は、母親に代わって父親が児のケアを行っていた。きょうだいのいる家族では、母親が児のケアに専念できるよう、父親がきょうだいを連れて外出することもあった。(2)仕事の調整:児のケアが継続できるよう、就労時間を変更したり、介護休暇を利用したりしていた。職場の状況によっては、自営業に転職あるいは退職するケースもあった。(3)行政機関への折衝:保育園の入園やバギーの助成申請などのために、母親や児と共に行政機関に出向き、家族の窮状やニードを切実に訴えて、行政側の対応を引き出していた。 考察 家族エンパワメントにおける父親の役割が明らかになった。今後は他の家族員からのデータを併せて、家族員間の相互作用について明らかにする必要がある。
著者関連情報
© 2014 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top