抄録
はじめに
強度行動障害と視聴覚障害を合併する動く重症心身障害者に対し、自分とモノとの関係のみから自分と人との関係へも関わりが広がること、他者理解、特に自らの意思を積極的に他者に伝える、他者の思いを受け入れて応じることを目標に個別療育を行ったところ、他者の存在を理解する、他者を行きたい方へ引っ張る等の行動が見られるようになり、他者との関係を構築する姿が見られた。個別療育を継続していく中で、個別療育記録を分析したところ、要求行動の量や質に変化がみられたので報告する。
対象
強度行動障害と視聴覚障害をもつ動く重症心身障害者39歳女性(以下、A)。大島分類5。強度行動障害スコア30点(個別療育実施後19点)。
方法
2010年5月〜2014年4月の個別療育を半年ごとに分け、個別療育記録からKHcoderで要求行動に関する語(「ひっぱる」「持っていく」等)の出現回数を抽出し、総抽出語数に対する割合を算出し、比較した。
結果と考察
要求行動は活動当初に比べ、2011年5月より増加した。活動は散歩中心で、Aは散歩へつれていくよう担当者を押すという行動がみられた。2012年5〜10月は散歩に加え、Aの好きな霧吹きやブラシング等の取り組みを開始した。担当者の手を持ち実物に触れさせる等、要求行動の質に変化が現れ、他者へより伝わりやすい行動となった。また、担当者の手をクレーンのように利用する行動がみられた。
まとめ
約4年間にわたる個別療育活動の継続的な関わりにより、Aの要求行動は量的にも質的にも変化した。自分だけの世界から、他者に「こうしてほしい」「一緒に○○したい」という気持ちが育まれた。このことから、他者とのコミュニケーションの方法や他者理解に関する行動に変化が現れた。強度行動障害と視聴覚障害を重複する動く重症心身障害者にとって、長期にわたる個別の関わりは、要求行動の変化を生み、育む機会につながったと考えられる。