抄録
はじめに
重複障害児(者)は、感染症の罹患など多くの面でQOLの低下が見られる。今回、補中益気湯の投与によりQOLの改善がみられた考えられた2例を経験したので報告する。
症例1
22歳、メロシン欠損症の女性。寝たきりで、重度側弯症で右胸腔はほとんどみられない。在宅人工呼吸と胃瘻からの栄養管理で全介助。有意語はみられ中等度知的障害を認める。現病歴;13歳時に慢性呼吸不全から気管切開と胃瘻造設を行った。支援施設に通所後、月に1回は微熱・発熱や鼻汁がみられ、抗生剤服用日数も多く、易疲労感を訴えていた。補中益気湯開始後18カ月以上経過しているが、会話が増加し、朝起きも良くなり、発熱もみられなくなり、在宅サービスも受けられる回数も多くなり、本人や家族も喜んでいる。
症例2
21歳、脳奇形による脳性麻痺の男性。重度知的障害を認め、寝たきり。14歳時に慢性呼吸不全から喉頭気管分離術と胃瘻からの栄養管理を行い、全介助。現病歴;特別支援学校高等部から年に肺炎のため外来での点滴加療が数回と入院が2〜3回みられ、抗生剤服用日数も多く見られた。19歳から補中益気湯を開始し2年経過しているが、入院は1回のみで外来での治療や抗生剤内服日数も激減し、家族は喜んでいる。
考案
補中益気湯は、成人で抗がん剤の副作用軽減のために使用されることも多く、エビデンス的にも証明されつつある。元来、補気・健脾作用により胃腸虚弱が強い人で、重複障害児(者)の証に適している。また、ウイルス侵入阻害作用、NK細胞活性化、TNF-αなどの産生抑制などが報告され、PFAPA症候群に対する有効性やインフルエンザ罹患の減少の報告も見られている。
結語
感染症発症予防や体力増強のため重度重複障害児(者)に対して補中益気湯を試行する価値があると考えられた。