抄録
緒言
今回、われわれは歯学部附属病院障害者歯科に受診した気管切開症例に対して、摂食・嚥下機能療法を行い、経口摂取可能になった例を中心にその問題点やアプローチ法について報告する。
方法および症例
1999年5月から2011年1月までに当院障害者歯科に受診した10名で、全例が気管切開であった。診療記録簿より後ろ向き調査を行った。年齢分布は3歳児1名、4歳児2名、5歳児1名、7歳児2名、9歳時1名、10歳児以上3名であった。主障害名は脳性麻痺3名の他、CHARGE症候群、メビウス症候群、二分脊髄および先天性ミオパチーなどであった。
結果
気管切開時期は3歳未満が大部分であり、経過とともに喉頭分離手術後2名、気管カニューレ装着5名、永久気管瘻2名、気切孔の自然閉鎖1名であった。初診時の摂食状況は全例が鼻注もしくは胃瘻であった。摂食機能検査でVE検査は8名に、VF検査は全例に行った。訓練内容は経管栄養を維持しつつ間接訓練を導入し、直接訓練では食形態への指導を中心に積極的に経口摂取を促す方向での対応を行った。舌接触補助床も3名に応用し、経口摂取量の増加に対して有効であった。平均4.0年間にわたる訓練を行い、8割以上の経口摂取可能になった症例は8名であった。食形態も普通食に近いものが4名で、ペースト食が5名であった。
考察
今回、気管切開症例に摂食機能検査を積極的に行い可及的に客観的な摂食評価を行って、他の医療機関などへの理解と協力が得られやすい環境作りに重点を置いた。歯科である当科のメリットを活かして、必要な歯科治療や口腔ケア、口腔補装具の作製なども行った。初診時年齢が低い症例では、その後の成長・発達などにより経口摂取の可能性が高いので、長期間の対応が必要である。今回は10名中、8名まではほぼ経口摂取が可能になり、気管切開症例への摂食・嚥下機能療法が有効であったと考える。