日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
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P-1-F16 無症候性細菌尿を示す重症児(者)の臨床的特徴
粟嶋 勇也本橋 裕子竹下 絵里石山 昭彦齋藤 貴志小牧 宏文中川 栄二須貝 研司望月 規央佐々木 征行
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2014 年 39 巻 2 号 p. 302

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抄録
はじめに 無症候性細菌尿(ASB)とは、尿中に有意な細菌数の増加を認めるが感染症状を認めない状態である。妊婦や泌尿器科的処置を要する患者を除いてASBに対する治療介入は推奨されていない。われわれの知るかぎり、重症児(者)におけるASBの管理については現時点で一定の指針は示されていない。 対象・方法 [研究1]2010年10月〜2014年5月に当科受診歴・入院歴のある重症児(者)35名の尿沈渣検査と尿培養検査を同時に行った91機会について、尿採取法別(単回導尿カテーテル尿、留置カテーテル尿、パック尿)に沈渣の細菌数(陰性:0〜数視野に散在、1+:各視野に散在、2+:多数、3+:無数)と尿培養の菌量(陰性〜107 CFU/mL)の相関を調べた。 [研究2]当科入院中の重症児(者)54名(男30名、女24名、大島分類1〜5)のうち、2010年10月〜2014年5月に行われた尿沈渣検査からASBを疑う患者群の臨床像を後方視的に検討した。 結果 [研究1]カテーテル尿では、尿培養での菌量が多いほど沈渣の細菌数は多数となる相関がみられた。パック尿では検体数が少なく、その相関は明瞭ではなかったが同様の傾向は見られた。 [研究2]研究1より、「沈渣の細菌数が、単回導尿カテーテルで2+以上、留置カテーテル尿・パック尿で3+」を細菌尿とし、カルテ記録から症候性尿路感染症と診断されなかった細菌尿をASBとした。ASBの既往を持つ患者(ASB群)は、男性9名(30%)、女性10名(42%)であった。尿路結石はASB群の26.3%、非ASB群の14.2%で認め、症候性尿路感染症はASB群の15.7%、非ASB群の5.7%で認めた。高血圧、腎機能障害、尿路系悪性腫瘍を合併した患者は両群ともに認めなかった。 考察 重症児(者)のASBは尿路結石と症候性尿路感染症を増加させる可能性があると考えられた。抗菌薬使用は耐性菌の出現が危惧されるため、重症児(者)のASBを治療の対象とすべきなのか、検討を重ねる必要がある。
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© 2014 日本重症心身障害学会
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