抄録
目的
早期産児と正期産児の運動発達障害の症状は、相違がある。その症状の相違を分析すべく、脳病理と臨床面から出生時在胎週数別に検討し、脳病理の特異性と、臨床症状の特徴を特に大脳白質を中心に追及し、リハビリテーションや療育に活用する。
対象・方法
脳病理では、早期産58例、正期産28例の乳幼児剖検例の脳病理所見、診断を使用する。また、臨床では療育施設に入所・外来利用している早期産67例、正期産20例の乳幼児患者の臨床情報を使用した。
結果
脳病理例では脳室周囲白質軟化症(以下、PVL)47例中、限局型は23例にみられ、在胎25週〜40週の広い時期にみられた。広汎型は17例、在胎27〜29週に多くみられた。びまん型と海綿状型は、在胎26週以下の超早期産に多かった。
皮質下の表層部の白質軟化は在胎34週以上に多く、2つに分けられた。中間部白質軟化は、正期産10例、34週以下の早期産2例にみられたが、在胎38週で最も多かった。皮質下白質軟化は、正期産16例、34週以下の早期産4例にみられたが、在胎40週で最も多かった。
臨床例では、脳性麻痺病型における痙性両麻痺が、22例、在胎23週〜41週の広範囲だが、特に在胎24〜29週の早期産に多くみられた。四肢麻痺は、19例、広範囲の在胎週数ではあるが、特に在胎23〜25週に多くみられた。片麻痺は、7例、広範囲に散見されるが、在胎31週〜41週に多くみられた。
まとめ
脳病理では、在胎26週以下の超早期産では、びまん型と海綿状型PVLが多く、在胎24〜29週では広汎型PVLが多く、遅い早期産から正期産では、中間部白質軟化と皮質下白質軟化が多かった。
臨床例では在胎27週〜29週に痙性両麻痺が多く、超早期産と正期産では、四肢麻痺が多い傾向にあった。
大脳白質の軟化巣の好発部位が、出生時の在胎週数で異なり、臨床例では麻痺の分布や知的障害の合併との関連性が考えられ、検討する必要がある。